絶滅したカリキマエラ・ペルプレクサ(Callichimaera perplexa)の再現画像
絶滅したカリキマエラ・ペルプレクサ(Callichimaera perplexa)の再現画像 / Credit:Kelsey M. Jenkins et al.,iScience(2022)
paleontology

視覚が極端に発達した白亜紀の奇妙なカニの生態

2022.01.07 Friday

2005年南米コロンビアのアンデス山脈で非常に奇妙な姿をしたカニの化石が発見されました。

それは約9500万年前白亜紀に生息していたと考えられる、非常に大きな目とオールのような脚を持った甲殻類で、2019年にイェール大学の研究チームにより新種として登録が行われました。

その生物は「Callichimaera perplexa(カリキマエラ・ペルプレクサ)」と名付けられています。

今回、米国イェール大学(Yale University)とハーバード大学(Harvard University)の古生物研究チームは、この奇妙な古代のカニの特徴の1つである大きな目を分析した新しい研究結果を報告しました。

それによると、カリキマエラの目は異常に高い光学特性を持っていたことがわかり、視覚に頼った捕食者だったと示されています。

研究の詳細は、科学誌『iScience』に2022年1月に掲載されています。

A crab’s-eye view of the ancient world https://news.yale.edu/2022/01/05/crabs-eye-view-ancient-world
The remarkable visual system of a Cretaceous crab https://doi.org/10.1016/j.isci.2021.103579

奇妙なカニの化石

Callichimaera perplexaの化石
Callichimaera perplexaの化石 / Credit:Daniel Ocampo R. / Vencejo Films

2019年に登録された新種の古生物「Callichimaera perplexa(カリキマエラ・ペルプレクサ)」には奇妙な特徴がいろいろとあります。

それは、オールのような平べったい脚をもち、曲がった爪と大きな複眼、脚のような口腔部、長い体を持ち一般的に認識されるカニとはだいぶ異なった姿をしています。

名付けられた学名の「Callichimaera perplexa」には複雑で美しいキメラという意味があります。

(属名「Callichimaera」が美しいキメラを意味し、「美しい」とは化石の良好な保存状態、「キメラ」は複数の分類群をあわせたような奇妙な姿のことを指します。
種小名「perplexa」はラテン語で混乱を意味し、系統的な位置づけが難解なことを示す)

学名にも記録されているように、このカニは化石の状態が非常に良好でした。

そのため白亜紀の標本としては、通常保存されないような非常に繊細な目の組織が、分析可能なレベルで残っていたのです。

今回の研究の筆頭著者であるイェール大学のケルシー・ジェンキンス(Kelsey Jenkins)氏は、「このような優れた光学組織が含まれた、優れた保存状態は稀です」と語ります。

そこで彼女は、現存する15種のカニ1000匹と、さまざまな発生段階を含んだ今回の化石を分析をすることにしたのです。

カニの標本を手にした研究筆頭著のケルシー・ジェンキンス氏。
カニの標本を手にした研究筆頭著のケルシー・ジェンキンス氏。 / Credit: Yale University

この研究では、カニの目の大きさと成長速度の比較が行われました

その結果、非常に興味深い古代のカニの生態がわかってきたのです。

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