ソーラーパネルとヒドロゲルを組み合わせて、空気中から水を集める
ソーラーパネルとヒドロゲルを組み合わせて、空気中から水を集める / Credit:Peng Wang(KAUST)et al., Cell Reports Physical Science(2022)
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乾燥地帯の空気中から水を作ってほうれん草も育ててしまう「ソーラーパネルシステム」が登場

2022.03.07 Monday

乾燥地帯では水が非常に貴重であり、植物を栽培するのは困難です。

しかし、他のエネルギーがないわけではありません。

では、地上に降り注ぐ灼熱の「太陽光」を、水生成や栽培に利用することはできないでしょうか?

サウジアラビアのキング・アブドラ科学技術大学(KAUST)生物環境科学工学部に所属するパン・ワン氏ら研究チームは、ソーラーパネルの余熱を利用して空気から水をつくるシステムを開発

これにより、水のない場所でもホウレンソウを栽培することに成功しました。

研究の詳細は、2022年3月1日付の科学誌『Cell Reports Physical Science』に掲載されています。

These solar panels pull in water vapor to grow crops in the desert https://www.eurekalert.org/news-releases/944511
An integrated solar-driven system produces electricity with fresh water and crops in arid regions https://www.cell.com/cell-reports-physical-science/fulltext/S2666-3864(22)00048-0

無駄になっていた太陽光エネルギーを再利用

ソーラーパネルを設置すると、太陽光を電気に変換できます。

ところが乾燥地帯の国々では、強すぎる太陽光を十分に活用できていませんでした

日差しの強い乾燥地域にソーラーパネルを設置すると、かなりパネルが熱くなってしまいます。

太陽光発電はパネルが熱くなると、発電効率が落ちるという弱点があります。

そのため、発電効率を維持するためにはこれを冷却させなければなりません。

しかし、熱とは取りこぼした太陽光エネルギーともいえます。

これは単に別のエネルギーを消費して冷やすのではなく、逆に有効活用することができないでしょうか?

この点に注目した研究チームは、余った熱エネルギー活用して、乾燥地帯特有の「水不足」「食料不足」の問題を解決しようと考えました

そこで電気・水・食料それぞれの生産システムを統合して、エネルギーの無駄を省くシステムを考案。

「太陽光を利用して水をつくり、その水で植物を栽培」しようとしたのです。

空気中の水分を吸収し、加熱で放出するヒドロゲルを開発
空気中の水分を吸収し、加熱で放出するヒドロゲルを開発 / Credit:Peng Wang(KAUST)et al., Cell Reports Physical Science(2022)

そこでチームは、空気中の水蒸気を吸収し、加熱されると凝縮した水として放出する特殊な材料を開発しました。

この新材料はヒドロゲル(またはハイドロゲル)と呼ばれる水を内部に含むゲルの一種です。

この特殊なヒドロゲルをソーラーパネルと組み合わせることで、パネルの排熱を利用して、乾燥地帯でも自動的に水が生成されるようにしたのです。

次ページ「電気・水・食料」生産を統合したシステムを開発

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