カブトガニの青い血が医療的に重宝される理由とは
カブトガニの青い血が医療的に重宝される理由とは / Credit: Business Insider – Why Horseshoe Crab Blood Is So Expensive | So Expensive(youtube, 2018)
animals plants

カブトガニの「青い血」が医療分野で重宝される理由とは? (2/3)

2022.08.15 Monday

2022.08.14 Sunday

前ページカブトガニの血が青い理由とは?

<

1

2

3

>

内毒素を検出できる唯一の天然資源

カブトガニの血液に秘められたある能力とは?
カブトガニの血液に秘められたある能力とは? / Credit: Business Insider – Why Horseshoe Crab Blood Is So Expensive | So Expensive(youtube, 2018)

1956年、アメリカの医学研究者であったフレッド・バング(Fred Bang、1916〜1981)は、カブトガニの血の奇妙な特性に気づきました。

なんとカブトガニの血は、エンドトキシン(内毒素:細内に含まれる毒素のこと)と反応すると、血球であるアメボサイト(変形細胞)が凝固して塊になるのです。

エンドトキシン(内毒素)は、医薬品医療機器に付着し、人体に入ると、発熱や敗血症性ショックを引き起こす恐れがあります。

そのため、注射器やペースメーカー、人工股関節といった滅菌医療機器に対しては、内毒素による汚染がないかどうか厳重にチェックしなければなりません。

その検出能力を、太古の昔から存在するカブトガニが持っていたのです。

今のところ、内毒素を検出できる天然資源は、カブトガニの血液だけだと言われています。

その後、バングの発見を引き継いだ研究者らは、アメボサイトの溶解物を医薬品の汚染検査に応用する物質を開発し、これを「ライセート試薬(LAL、リムルス変形細胞溶解物)」と命名しました。

内毒素にライセート試薬を落とすと、凝固し始める
内毒素にライセート試薬を落とすと、凝固し始める / Credit: Business Insider – Why Horseshoe Crab Blood Is So Expensive | So Expensive(youtube, 2018)

1977年には、アメリカ食品医薬品局(FDA)により、ライセート試薬の正式な使用が認可されています。

以来、カブトガニの血液は、私たちの健康を陰ながら支える役目を担ってきましたが、近年、ある問題が懸念され始めています。

それが、カブトガニの減少です。

先述したように、採血したカブトガニは殺すことなく海に返し、また、その過程で死亡する個体もわずか3%と目されていました。

ところが、その予想値は、事実とかなり違うことが分かってきたのです。

次ページカブトガニの血に代わる試薬は作れるのか?

<

1

2

3

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

動物のニュースanimals plants news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!