脳を刺激して過食を止める
脳を刺激して過食を止める / Credit:Canva
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「過食性障害」を脳インプラントの刺激で抑制することに成功!

2022.09.07 Wednesday

過食性障害(BED:Binge eating disorder)とは、衝動的にたくさん食べてしまう症状であり、「むちゃ食い障害」とも呼ばれます。

一般的な「食べ過ぎ」とは異なり、どうしても我慢できず、満腹になっても食べるのを止められません。

最近、アメリカ・ペンシルベニア大学(The University of Pennsylvania)ペレルマン医学部に所属するケイシー・ハルパーン氏ら研究チームは、BED患者の脳に小さなデバイスを埋め込んで刺激を与えることで、過食の頻度を大きく減少させることに成功しました。

研究の詳細は、2022年8月29日付の学術誌『Nature Medicine』に掲載されています。

Deep Brain Stimulation Shows Promise Against Binge Eating Disorder, Penn Research Finds https://www.pennmedicine.org/news/news-releases/2022/august/deep-brain-stimulation-promising-against-binge-eating-disorder World-first study tests brain implants in humans to stop binge eating https://newatlas.com/science/deep-brain-implant-stop-binge-eating/
Pilot study of responsive nucleus accumbens deep brain stimulation for loss-of-control eating https://www.nature.com/articles/s41591-022-01941-w

過食性障害の患者を救うための研究

過食性障害(BED)は、一般的に嘔吐を伴なわない「頻繁な過食」を特徴とします。

自分で食欲をコントロールできず、猛スピードで、空腹・満腹に関係なく食べ続けてしまうのです。

BED患者は過度な肥満により身体的健康を損なうだけでなく、過食後の後悔によって精神的健康も損なってしまいます。

過食性障害の患者は自分では食欲をコントロールできない
過食性障害の患者は自分では食欲をコントロールできない / Credit:Canva

こうした問題を解決する1つのアプローチとして、ハルパーン氏ら研究チームは、食欲を抑制する「インプラント」を研究してきました。

脳に小型デバイスを埋め込み、刺激を与えることで過度な食欲を抑制しようというのです。

そして2017年の研究では、側坐核(そくざかく:前脳にある報酬・快感・嗜癖などに関係する神経細胞の集団)の活動と過食に関連性が見られました。

「側坐核における低周波の活動」が暴食の直前に活発になっていたのです。

この特徴的な活動は、通常の食欲・食事では見られないものです。

次に、マウスの側坐核を刺激したところ、通常であればむさぼるように食べる高カロリー食品の摂取量が大幅に減りました。

そこで研究チームは、この結果を踏まえて、ヒトを対象にした側坐核の刺激実験を行うことにしました。

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