最初の声はいつ? 動物の「鳴き声の起源」が4億年前に遡ると判明
最初の声はいつ? 動物の「鳴き声の起源」が4億年前に遡ると判明 / Credit:Gabriel Jorgewich-Cohen et al . Common evolutionary origin of acoustic communication in choanate vertebrates (2022) . Nature Communications
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進化学:脊椎動物における音声コミュニケーションの起源の推定 http://www.natureasia.com/ja-jp/research/highlight/14259
Common evolutionary origin of acoustic communication in choanate vertebrates https://www.nature.com/articles/s41467-022-33741-8

2022.10.26 Wednesday

生物が最初に声を発したのはいつ? 動物の「鳴き声の起源」が4億年前に遡ると判明

現在の地球は多くの生き物たちが発する鳴き声で覆われています。

桃太郎のお供であるイヌ、サル、キジにもそれぞれの鳴き声があり、海に住むクジラやイルカも独特の声を発します。

人間のおしゃべりもまた、鳴き声をあげる能力を基礎にしています。

では、地球で最初の「鳴き声」が響いたのはいつだったのでしょうか?

スイスのチューリッヒ大学(University of Zurich)で行われた研究によれば、あらゆる陸上脊椎動物の鳴き声をあげる能力は、4億年前に存在した共通祖先にルーツを持つことが判明した、とのこと。

また結論に至る過程も非常にユニークであり、カメやトカゲやハイギョなど、これまで鳴き声をあげないと考えられていた動物にも、本当は鳴き声があることを発見することからはじめられました。

4億年前の地球で、最初に鳴き声をあげた動物とは、いったいどんな姿をしていたのでしょうか?

研究内容の詳細は2022年10月25日に『Nature Communication』にて公開されました。

最初の一声はいつ? 動物の「鳴き声の起源」が4億年前に遡ると判明

かつての地球は静寂に包まれていました。

空気を振るわせるのは風や波、雨や雷など環境音に限られており、生き物たちから発せられる鳴き声はどこにも存在しませんでした。

一方、現在の地球は多種多様な動物たちの鳴き声に彩られています。

地球はいつから動物たちの鳴き声で覆われるようになったのでしょうか?

これまで進化学者たちは、さまざまな動物の鳴き声を調べ、その起源を解明しようとしてきました。

(※ここで言う鳴き声とは「と口を使って発せられる音」として定義しています)

その具体的な方法は、鳴き声をあげられる異なる種を比較し、その共通祖先を辿っていくというものでした。

難しく聞こえるかもしれませんが、なんのことはありません。

たとえば人間とチンパンジーは両方とも鳴き声をあげられるので、共通祖先である小さなサルにも鳴き声をあげられたであろう。

そして小さなサルとネズミも鳴き声をあげるので、その共通祖先である原始的な哺乳類も鳴き声をあげていただろう。

というように(基本的には)鳴き声をあげられる能力をもとに、共通先祖を調べていくだけです。

鳴き声をあげられる能力をもとに、共通先祖を調べていく
鳴き声をあげられる能力をもとに、共通先祖を調べていく / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

あまりぱっとしない方法に思えるかもしれませんが、上の例のように鳴き声の起源を人間、チンパンジー、小さなサル、ネズミ、原始的な哺乳類と上手く遡れているのは事実です。

2020年にアリゾナ大学で行われた研究では、この方法を用いて1800種の鳴き声をあげることが知られている動物を出発点にすることで、鳴き声の起源が1~2億年前であり、複数の4足動物種で独立して発生したものであると結論付けました。

しかしチューリッヒ大学の研究者たちは、この研究に盲点を発見します。

2020年の研究ではカメやトカゲ、ハイギョなどは「鳴き声」をあげない生物として考えられており、共通先祖を辿る出発点から除外されていたからです。

そして除外された理由が主に「一般的に鳴かないと考えられているから」というものでした。

つまり実際にカメやトカゲに密着して辛抱強く録音を繰り返し、本当に鳴かないと結論付けて除外したわけではなかったのです。

そこで今回チューリッヒ大学の研究者たちは2020年の研究の盲点を攻めるため、実際にカメやトカゲやハイギョなど53種の鳴かないと考えられていた動物種に密着し、辛抱強く録音を繰り返しました。

(※別に2020年のアリゾナ大学の研究者たちに恨みがあったわけではありません)

アシナシイモリはヘビのようにみえるがイモリです
アシナシイモリはヘビのようにみえるがイモリです / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

結果、一般に鳴き声をあげないと考えられていた53種類(カメ・トカゲ・ヘビ・アシナシ イモリ・サンショウウオ・ハイギョ)の全てにおいて、多様で複雑な鳴き声が存在することが判明します。

たとえばペットショップでよく売られている「アシポチ ヤマガメ」を調べたところ、求愛の鳴き声、子供のカメだけが発する鳴き声、噛みつきなど攻撃時に発せられる鳴き声、さらには新しく出会ったカメに挨拶をするためと考えられる鳴き声など、30以上の多様な発生パターンが確認されました。

そして研究者たちは、これら新たに鳴き声をあげることが確認された53種を2020年の研究で検証された1800種に追加し、改めて地球で最初に鳴き声をあげた動物の探求を行いました。

肺を使った鳴き声をあげる能力は4億年前の肉鰭類に起源がありました
肺を使った鳴き声をあげる能力は4億年前の肉鰭類に起源がありました / Credit:Gabriel Jorgewich-Cohen et al . Common evolutionary origin of acoustic communication in choanate vertebrates (2022) . Nature Communications

結果、約4億700万年前に存在した、魚と4足動物の中間にあたる肉鰭類(にくきるい)と呼ばれる、単一の共通祖先に行き当たりました。

肉鰭類(にくきるい)は陸上に最初に進出した脊椎動物の直接的な祖先と考えられています。

この結果は、現在の地球上が動物たちの歌声で満ちているのは、今から4億年前のデボン紀に存在した共通祖先が1回限りの進化チャンスを掴んで鳴き声をあげる能力を獲得できたからであることを示します。

しかし研究者たちはまだ満足していませんでした。

次ページ「探求は続く」本当の起源は魚が誕生するより前かもしれない

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