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credit:<a href="https://www.photo-ac.com/main/detail/24779837">フォトAC</a> / くつろぐ2匹のネコ
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イエネコが群れで暮らせる理由を分析!仲が良いネコは腸内細菌叢も類似していた (2/3)

2022.10.30 Sunday

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「群れ」の中のイエネコのホルモンを調査

寄り添って眠るネコ
寄り添って眠るネコ / credit:Pixabay

麻布大学の子安ひかり氏らの研究グループは血縁関係のない5匹前後のイエネコのグループを3つ作り、2週間に渡って行動観察とホルモンの調査を行いました。

調査されたホルモンは以下の3種類で、動物の群れの行動と深く関わるものです。

①オキシトシン:愛情ホルモン、養育行動を誘起させる

②テストステロン:競争のホルモン、群れの順位競争や縄張り行動に関与

③コルチゾール:ストレスのホルモン、心理的負荷を感じると分泌

これらのホルモンとネコの行動(空間の共有、フードシェア、アログルーミング)の関連性を調査することで、ネコがどのような心理で「群れ」になって暮らしているのか調査されました。

ネコの「群れ」は群れじゃない

ネコのアログルーミング
ネコのアログルーミング / credit:フォトAC

オキシトシンは母子の接触によって分泌されるホルモンとされていて、作用することで社会的ストレスを減らすと言われています。

イエネコと同じネコ科であるライオンに対しても、オキシトシン経鼻薬を用いた際には群れの個体間の距離が縮まったとの報告がありました。

また、霊長類などの群れにおいては同じ群れではオキシトシンが多いほど親密性を示すアログルーミング(互いに毛づくろいし合うこと)が増えるそうです。

このため、ネコのグループ飼育の観察の際にもオキシトシンがアログルーミングに関連すると考えられていました。

しかし、驚くべきことにネコについてはオキシトシンが高い個体はアログルーミングが少ないという全く逆の結果となったのです。

つまり、複数のネコが近い距離で過ごしていたとしても、それは群れで生活する動物たちの集団とでは性質が異なるということになります。

愛情ホルモンと呼ばれるオキシトシンですが、実は群れの中の個体か外の個体かといった個体識別にも関与しており、外の個体に対しては敵対的に機能すると言われています。

アログルーミングが少ないネコにオキシトシンが高いという結果を考えると、ネコはたとえ一緒に暮らしていても「それぞれが別々の群れ」という認識を持っているのかもしれませんね。

それでは逆に、「群れ」とは異なる集団生活を行いながらも、アログルーミングやフードシェアなど親密な行動を示すネコたちはどのような心理なのでしょうか。

親密性の高いネコの特徴

フードシェアするネコ
フードシェアするネコ / credit:フォトAC

ネコたちの親密性には、テストステロンとコルチゾールが大きく関わっています。

競争のホルモンとも呼ばれ、攻撃性にもつながると言われるテストステロンですが、集団の中におけるネコの行動では攻撃性ではなく「逃げるかどうか」という点で現れました。

テストステロンが少ないネコは他の個体が来ても逃げ出さず、個体同士の距離が近くなる傾向にあったのです。

コルチゾールもまた、少ない個体ほど他の個体に近寄る機会が多くなり、フードシェアの回数が多くなっていました。

コルチゾールは捕食者などの脅威と直面した際の恐怖や攻撃性に関与するホルモンですので、コルチゾールが少ない個体は他の個体に対し恐怖や脅威をあまり感じていないのでしょう。

前ページで「多頭飼いのすべてのネコが仲良しというわけではない」という話をしましたが、おそらく仲が良いネコはテストステロンとコルチゾールが少ない個体なのだと考えられます。

しかし、それらのホルモンの量は一生ついて回るものなのでしょうか?

この研究では、腸内細菌叢の変化によって、ホルモンの変化が期待できる可能性を指摘しています。

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