タンポポを模倣した「人工妖精」は上方に空気の渦を作り出して揚力を生み出す
タンポポの種(繊毛を含む)1つの重量は、種類によって差がありますが、だいたい0.4~1.5mgだと言われています。
手に乗せても実感できないほどの軽さが、「風に乗る」秘訣なのです。
同様に、開発された人工妖精の重量はわずか1.2mgと、タンポポの綿毛とほとんど重さは変わりません。
ではタンポポの綿毛はなぜ、あの構造で長距離を風で移動することができるのでしょうか?
![(左)タンポポの綿毛(冠毛)の上方には空気の渦ができる、(右)タンポポを模倣した人工妖精の上方にも空気の渦ができている](https://nazology.net/wp-content/uploads/2023/02/1e2346a40d3d3897d54e42c10f5b24a2-875x600.jpg)
タンポポの綿毛は、多数の細孔(小さな穴)が空いたような構造となっており、綿毛の上方に渦輪(環状の空気の渦)が作られるようになっています。
この渦輪は、綿毛(冠毛)の隙間を通り抜ける空気と外側を通る空気の圧力差で発生します。
この渦が揚力を生むことで、綿毛は長く飛び続けることができるのです。
研究チームは、人工妖精でもこの渦輪が発生するようデザインしました。
このメカニズムのおかげで、人工妖精はタンポポの綿毛のように風の力で十分な揚力を得ることができます。
![人工妖精の上方に生じる空気の渦が揚力を生み出し、より遠くまで飛ぶのを助ける](https://nazology.net/wp-content/uploads/2023/02/8864c87384d7afb833e412c29d1e2cc2-900x340.jpg)
タンポポの綿毛は、その種を10~100kmも運ぶことがあります。
研究チームは人工妖精がバッテリーなしで、同様の飛行が可能だと考えています。
将来的には、花粉を抱えた数百万の人工妖精が、送粉者としてはるか遠くまで飛んでいくことを期待できます。
とはいえこれを実現させるためには、なすべき多くの課題や調査が残っています。
現在研究チームは、2026年8月まで続くプロジェクトの中で、人工妖精に生分解性を持たせる方法や、着地場所をより正確に制御する方法を探しています。