複数本の竜血樹
複数本の竜血樹 / Credit : Wallpaper Flare
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ドラゴンの血を流す!?不思議な伝説の木「竜血樹」とは?

2023.05.04 Thursday

草木を折ったら、動物のように赤い血が流れるでしょうか? 当然「流れない」と皆さん答えるかと思います。

しかし、赤い血のような汁を流す木が実際にあるとしたら、どうでしょう? その木は実在し、名を「竜血樹」と言います。

その汁の正体とは何なのか? なぜ赤いのか? 今回はそんな「竜血樹」の秘密に迫ります。

カナリア諸島の竜血樹, 京都大学 経営管理大学院 川北英隆HP http://www.hidetaka-kawakita.com/blog/2015/06/post-1929.html 竜血(麒麟血), 結晶美術館 https://sites.google.com/site/fluordoublet/%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%93%E3%81%9D%E7%B5%90%E6%99%B6%E7%BE%8E%E8%A1%93%E9%A4%A8%E3%81%B8/%E8%89%B2%E5%BD%A9%E3%81%AE%E5%8D%9A%E7%89%A9%E8%AA%8C/%E7%AB%9C%E8%A1%80%E9%BA%92%E9%BA%9F%E8%A1%80
Dragon’s blood tree – Threatened by overmaturity, not by extinction: Dynamics of a Dracaena cinnabari woodland in the mountains of Soqotra, Hana Habrova https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0006320708004783 Sustainable Land Use Management Needed to Conserve the Dragon’s Blood Tree of Socotra Island, a Vulnerable Endemic Umbrella Species, Petr Madera https://www.mdpi.com/2071-1050/11/13/3557

生物の身体にある「管」「汁」とは?

植物にある葉脈
植物にある葉脈 / Credit : Freebies DB

草木には血管がありません。これはなぜでしょうか?

それは、生物として酸素、栄養を全身に行き渡らせるシステムが、植物と動物で異なるためです。

私達を含めた動物の多くには、大抵「血管」が存在します。哺乳類の多くは、効率良く酸素を運ぶために、鉄分と酸素をくっ付けて運搬してます。

鉄がさびた色は何色でしょうか? さびた釘などを想像すると「赤っぽい」ことが分かるかと思います。これが、多くの哺乳類の血液が赤い理由です。

一方、植物にも血管のような「全身に張り巡らされた管」は存在します。

普段目にしている葉の「葉脈」がそれにあたります。葉脈の正体は、水を運ぶ「道管」と栄養を運ぶ「師管」が集まった「維管束」です。

維管束の中の液体には、酸素にくっ付く鉄が存在しないため、赤い色にはなっていないのです。

赤い血を流す樹木「竜血樹」

竜血樹から出る赤い汁は「ドラゴンの血」という言い伝え
竜血樹から出る赤い汁は「ドラゴンの血」という言い伝え / Credit : IMGBIN

しかし、傷を付けると赤い血のような汁を流す木が存在します。

その現象が特徴的であることから、この木は「竜血樹」と呼ばれますが、一体どのような木なのでしょうか?

広義には、リュウゼツラン科ドラセナ属というグループに分類される樹木を全て竜血樹と呼んだり、赤い汁を流す木を竜血樹と呼ぶ場合があります。

しかし、基本的には「ドラセナ・ドラコ」「ドラセナ・シナバリ」の2種を竜血樹と呼びます。

名前の由来は、ドラセナが「雌竜」、ドラコが「竜」、シナバリが「朱色の」という意味を持つ所から来ています。「竜血樹」という和名は、これらの英名がそのまま和訳された、とお分かりいただけるのではないでしょうか?

生息地域では「ドラゴンが死ぬと竜血樹になる」「ドラゴンの血液が流れ出る樹が竜血樹」という言い伝えがあります。

竜血樹とはどんな木なのか?

ソコトラ島に自生する Dracaena cinnabari
ソコトラ島に自生する Dracaena cinnabari / Credit:Wikimedia

ドラセナ・ドラコは大西洋のカナリア諸島に、ドラセナ・シナバリはインド洋のソコトラ諸島に生息しています。

地域に合わせ乾燥や暑さに強い性質を持っています。また、成長はとても遅いですが、最終的には最大約20mという高木になることもあります。常に葉が常緑していることも特徴的です。

また、目を引くのは、その形状でしょう。

幹のある高さから一斉に無数の枝を出しており、そこからは剣上の葉が非常に密生し、大きな樹冠を形成しています。なぜこのような奇妙な形なのでしょうか?

通常の草木は、光合成のために枝を大きく広げます。しかし、竜血樹は、光合成よりも「海から吹き付ける霧を結露としてかき集めること」を重視したのです。

傘のような葉で霧の水滴を受け止めて、木の根元に滴らせることで、乾燥地域で生き残ることができたと考えられています。また、自らの影によって水分の蒸発も抑えることができています。

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