音を「量子的重ね合わせ」にすることに成功!「聞こえる+聞こえない」の不思議
音を「量子的重ね合わせ」にすることに成功!「聞こえる+聞こえない」の不思議 / Credit:Canva . ナゾロジー編集部
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音を「量子的重ね合わせ」にすることに成功!「聞こえる+聞こえない」の不思議

2023.06.23 Friday

量子の世界では音も奇妙になるようです。

米国のシカゴ大学(UChi)で行われた研究により、音の最小単位であるフォノン(音子)を量子的な重ね合わせにすることに成功しました。

重ね合わせ状態になった1個のフォノンは2つの場所に同時に存在するようになり、観測されるまでどのマイク(収音器)に辿り着くかわかりません。

音が「聞こえる状態」と「聞こえてない状態」が重なり合う不思議な世界では何が起こるのでしょうか?

今回はまず光子を例にとって量子現象を説明しつつ、フォノンにも同じ量子的振る舞いが起こる様子を紹介していきたいと思います。

研究内容の詳細は2023年6月8日に『Science』にて掲載されました。

Pritzker Molecular Engineering researchers “split” phonons – or sound – in step toward new type of quantum computer https://pme.uchicago.edu/news/pritzker-molecular-engineering-researchers-split-phonons-or-sound-step-toward-new-type-quantum
Splitting phonons: Building a platform for linear mechanical quantum computing https://www.science.org/doi/10.1126/science.adg8715

「存在する状態」と「存在しない状態」に分割する

「存在する状態」と「存在しない状態」に分割する
「存在する状態」と「存在しない状態」に分割する / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

私たちが好きな音楽を聴くとき、音楽は途切れの無い波のように感じます。

ですが実際には、全ての音は「フォノン(音子)」とよばれる小さな単位でできています。

も一見すると途切れなく部屋の中を照らしているようにみえても「フォトン(光子)」という最小単位が集まって構成されていますが、音もフォノン(音子)の集まりでできているのです。

そのため量子力学的には、フォノン(音子)はフォトン(光子)の音版と言うことができるでしょう。

フォトン(光子)やフォノン(音子)に出会うには光や音を限界まで弱くします。

光や音を弱くしていくと、最終的に光や音には1個のフォトン(光子)やフォノン(音子)だけが含まれるようになります。

ただそれ以上小さくすることはできません。

最小単位である光子やフォノンは、それ以上分割できないという性質を持つからです。

しかし少なくとも光子については、量子力学のトリックを使うことで、ある意味での分割、すなわちある場所に「存在する状態」と「存在しない状態」が重ね合わさった究極の分割状態にすることが可能になります。

(※これは素粒子を分解して2つにするという意味ではありません。あくまで研究者の比喩表現です)

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