連鎖的に続く搾取
連鎖的に続く搾取 / credit:フォトAC
psychology

奪われたものは他者からでも奪い返す「搾取の連鎖」とは?

2023.10.06 Friday

人は誰かから何かもらったとき第三者に「おすそ分け」することがあります。

与えられたものを他者に与えるポジティブな連鎖は、人々が協力し社会を形成することの本質と言えます。

しかし、最新の研究でこれと全く逆の行動である「搾取の連鎖」もまた、人間の心理に組み込まれていることが明らかになりました。

実際、自分が損をしたときに「他の誰かを損させてでも自分の損を取り返したい」と思ってしまったことは少なくないのではないでしょうか?

今回はそんな「搾取の連鎖」に関する研究を紹介します。

他者から奪い取るという負の行動は第三者に対しても連鎖する https://www.tsukuba.ac.jp/journal/society-culture/20230731140000.html
Individuals reciprocate negative actions revealing negative upstream reciprocity https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0288019

身近に潜む搾取の連鎖

マルチ商法(イメージ)
マルチ商法(イメージ) / credit:フォトAC

まずは搾取の連鎖のわかりやすい実例からお話していきましょう。

マルチ商法やネットワークビジネスはこの「搾取の連鎖」の心理を巧みに利用したものだと言えます。

これらは会員になって商品を売買し、その利益や新規会員の紹介料を得るものですが、最初は年会費や商品の仕入れ代金を払わなければなりません。

そのマイナスを少しでもプラスにしようと躍起になって商品をすすめたり、会員になるよう勧誘したりする行為は、まさに搾取されたものを搾取することで取り戻そうとする連鎖です。

また最近よく聞く情報商材詐欺も似たような手口です。

「簡単に儲かる」と言ったうたい文句につられ情報商材を買ってしまったはいいものの、中身はその情報商材を売ることで儲けるという内容になっています。

情報商材を買った人は「払ったお金を無駄にしたくない」「損したくない」という思いからその情報商材が簡単に儲かるものではないと知りながら全く関係ない第三者に売ろうとします。

搾取される側から搾取する側にまわろうとする、まさに「搾取の連鎖」です。

このような搾取の連鎖は人間の自然な心理として漠然と認知されていたものの、これまで定量的に評価されたことがありませんでした。

しかし、筑波大学の梅谷氏らが行った実験により、搾取された人は全く関係のない第三者から搾取しようとし、奪われたのと同程度のものを奪おうとすることが明らかになったのです。

次ページ搾取の連鎖に関する実験

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