移植手術を受けたアーロン・ジェームス氏(左)と手術を主導したエドゥアルド・ロドリゲス氏(右)
移植手術を受けたアーロン・ジェームス氏(左)と手術を主導したエドゥアルド・ロドリゲス氏(右) / Credit:Aaron James, Eduardo D. Rodriguez(NYU Langone Health),NYU Langone Health Staff_NYU Langone Health Performs World’s First Whole-Eye & Partial-Face Transplant(2023)
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高圧線作業事故で「顔を失った男性」を世界初の「眼球と顔面の移植手術」が救う

2023.11.20 Monday

数千ボルトの電圧がかかる「高圧線」の作業員であるアーロン・ジェームス氏は、誤って活線に触れてしまい、左目を含む顔の大部分と左腕を失ってしまいました。

なんとか一命を取り留めた彼は、失った顔面を取り戻すために、世界初の左目の眼球移植と顔の部分移植を受けることになります。

この大手術を行ったのはニューヨーク大学ランゴンヘルス(NYU Langone Health)に所属するエドゥアルド・ロドリゲス氏ら医療チームです。

2023年5月に実施された手術の結果、眼球(視力は未だ戻らず)と顔の移植は成功し、ジェームス氏は顔と一部の機能を取り戻すことができました。

詳細は、2023年11月9日付の『NYU Langone Healthのプレスリリース』に掲載されています。

NYU Langone Health Performs World’s First Whole-Eye & Partial-Face Transplant https://nyulangone.org/news/nyu-langone-health-performs-worlds-first-whole-eye-partial-face-transplant World-first whole-eye and partial-face transplant deemed a success https://newatlas.com/medical/world-first-whole-eye-and-partial-face-transplant/

高圧線の事故により顔面の大部分を失う

高圧線の作業中、重傷を負ってしまう
高圧線の作業中、重傷を負ってしまう / Credit:Aaron James, Eduardo D. Rodriguez(NYU Langone Health),NYU Langone Health Staff_NYU Langone Health Performs World’s First Whole-Eye & Partial-Face Transplant(2023)

2021年6月、46歳の高圧線作業員のアーロン・ジェームス氏は、仕事中に致命的な重傷を負いました。

誤って活線が顔に当たってしまい、7200ボルトの電気ショックを受けてしまったのです。

彼は奇跡的に一命を取り留めましたが、左目、左頬、鼻、唇、前歯、顎、そして左腕(利き腕)を失ってしまいました。

すぐに複数回の手術が行われましたが、それらの部位(皮膚と骨)は溶けたように無くなっており、元に戻ることはありませんでした。

事故により顔面の大部分を失ったジェームス氏。マスクをしているが鼻や唇などを失ってしまっている。
事故により顔面の大部分を失ったジェームス氏。マスクをしているが鼻や唇などを失ってしまっている。 / Credit:Aaron James, Eduardo D. Rodriguez(NYU Langone Health),NYU Langone Health Staff_NYU Langone Health Performs World’s First Whole-Eye & Partial-Face Transplant(2023)

左目に関しては、当初眼球は残っていましたが、激しい痛みがジェームス氏を悩ませたため、テキサス州の外科医によって摘出せざるを得なかったようです。

それでも外科医は、将来の移植の可能性に向けた手術を行いました。

できるだけ視神経を長く残すために、眼球付近で視神経を切断したのです。

顔面の大部分を失ったジェームス氏は、見た目が大きく変わりました。

(※移植手術前のジェームス氏の状態は少しショッキングなため、こちらのリンクに掲載しています:画像

また左の視力を失い、固形食を口に含み、匂いを感じ、味わうことができなくなりました。

絶望にとらわれてもおかしくない状況でしたが、それでもジェームス氏は前向きな姿勢を崩しませんでした。

医師ロドリゲス氏ら医療チームと共に、移植手術に向けて意欲的に取り組んでいったのです。

その積極性の高さは、ロドリゲス氏が「彼は非常に意欲的に取り組んでいます。これ以上、完璧な患者を求めることはできません」と驚くほどでした。

移植手術の準備が整う
移植手術の準備が整う / Credit: JOE CARROTTA ,NYU Langone Health Staff_NYU Langone Health Performs World’s First Whole-Eye & Partial-Face Transplant(2023)

そして多くの準備と計画の後、2023年2月に、ジェームス氏は全米臓器配分ネットワーク(UNOS)のレシピエント(移植を受ける人)のリストに掲載されました。

それからわずか3カ月後の2023年5月、理想的なドナー(臓器・組織を提供する人)が見つかりました。

ドナーは30代の男性であり、生前臓器提供に同意していました。彼の家族もその意志を尊重して、惜しみなく彼の身体の組織を寄付してくれたのです。

(このドナーは他にも腎臓、肝臓、膵臓を3人のレシピエントに提供しており、3名の命を救っている)

これによって、このドナーの眼球と顔面の皮膚や骨が、ジェームス氏に移植されることになりました。

次ページ成体幹細胞を用いた世界初の眼球移植へ

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