ADHD傾向のある人では時間の感覚が抜け落ちてしまう「時間盲」が起きる
ADHD傾向のある人では時間の感覚が抜け落ちてしまう「時間盲」が起きる / Credit: canva
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どれくらい時間が過ぎたかわからない…「ADHDの時間盲」とは? (2/2)

2023.12.03 Sunday

前ページ大人に見られる「ADHD」の特徴とは

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ADHDで「時間盲」が起こる2つの原因

近年の研究で、ADHDの原因には前頭葉(※)の働きが生まれつき弱いこと、あるいは何らかの機能的な障害が起きることが関わっていると指摘されています。

(※ 注意・思考・感情のコントロールを司ったり、物事を整理・処理・実行する機能を担っている領域のこと)

そうした脳の問題が、次の2つの機能障害を起こすことで時間盲を誘発しているのではないかと考えられています。

1つは実行機能の障害です。

実行機能とは、あるタスクを実行するために必要な一連の脳機能を指します。

具体的には「タスクの計画を立てる → タスクを小分けして段取りを考える → その作業をスケジュール通りに進める → 修正点があればチェックし直す → 不必要な感情や欲求は制御する」などです。

しかしADHDの人は実行機能がうまく働かないため、タスクをいくつかの作業プロセスに小分けしたり、計画に沿って物事を進めることが難しくなります。

例えば、友人とお昼の12時に待ち合わせしているシチュエーションを考えてみましょう。

朝8時に起きたとすると、待ち合わせに間に合うように「準備」を始めます。

ところがADHDの人は「準備」というタスクを「朝ごはんを食べる」「シャワーを浴びる」「服を着替える」「タクシーを呼ぶ」といった作業に小分けして、計画することができません。

そのせいで時間の計算を誤り、待ち合わせ時間に遅刻する「時間盲」が起きてしまうのです。

時間盲が起きるのは脳の機能障害に原因がある?
時間盲が起きるのは脳の機能障害に原因がある? / Credit: canva

もう1つはドーパミンの機能障害です。

ドーパミンとは神経伝達物質の一つで、集中力や意欲を高める作用があります。

ところがADHDではドーパミンの出方が非常に不安定になっていることが分かっています。

例えば、周囲から強制されるような宿題や作業をするときはドーパミンが出ないので、集中力を欠き、不注意や多動性の症状が出ます。

その一方で、ゲームや読書、テレビの視聴など自分の趣味や好きな作業をするときは、逆にドーパミンが出過ぎて、声をかけても聞こえなかったり、次の作業に移れなくなります。

これが時間感覚の喪失を引き起こしていると考えられるのです。

「時間盲」と上手く付き合うには?

時間盲は仕事にもプライベートにも多大な悪影響を及ぼし、周囲との人間関係だけでなく自尊心までも深く傷つけてしまいます。

しかしADHDの時間盲が、ここまでに述べたような脳の機能障害にあることを考えると、それを根本から治すことはできません。

それでも時間盲と上手く付き合いながら、身の周りの時間を管理していく方法ならあります。

特に有効なのは「タイマーの活用」です。

ADHDの時間盲の特徴は、タスクに夢中になりすぎるあまり、時間の存在を忘れてしまうことでした。

そこでタイマーを有効に活用することが推奨されます。

例えば、ある作業を10時から10時半までに終わらせる必要があるなら30分タイマーをセットすることで、意識を現実に引き戻し、時間の超過を防ぐことができます。

画像
Credit:canva

それから「日々のルーティン化」も有効でしょう。

1日のやるべきことをリストアップして、それをする時間帯を細かく設定し習慣化するのです。

具体的には、朝7時〜7時30分:朝食、7時30〜8時:シャワー・着替え、8時〜8時30分:通勤… というように。

このルーティンが身に付けば、時間の超過も自然となくなっていき、不注意によるミスや物忘れを大幅に減らすことができるでしょう。

またADHDについては、診断されていなくてもその傾向を持つ人は社会に多く存在します。

そうした人たちは、単に時間が守れない、時間を意図的に無視しているように見えるかもしれません。

しかし、これは本人にもどうにもできない脳の問題である可能性が高いため、今回の事実を知った人は、上手く時間を守れない人たちには「時間盲」が起きている可能性も考慮し、その特性を理解して付き合っていくことが大切です。

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