NASAのJuno探査機が撮影した木星の帯とゾーン
NASAのJuno探査機が撮影した木星の帯とゾーン / credit:NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS
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もっと大きければ太陽になっていた!?『木星』ー太陽系最大の惑星の謎に迫る (3/4)

2024.08.13 Tuesday

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木星に着陸することは可能なのか?

TVアニメ「銀河鉄道999」では火星の次の停車駅はタイタン(土星の衛星)になっています。なぜ木星には銀河鉄道が停車しないのでしょうか?

それは、木星はガス惑星のため着陸できるような固い地面がないからです。固い地盤がないため、駅や線路を建設することもできません。

それでは、木星がガスでできているならその中を通り抜けることはできるのでしょうか?

木星の中にダイブするとどうなる?

木星の内部モデル
木星の内部モデル / credit:NASA/JPL-Caltech/SwRI/John E. Connerney

木星には明確な地面がありません。このような明確な地面を持たないガス惑星について天文学の慣習では、圧力が1気圧になる面を「表面」と定義する場合があります。

木星の場合も、どこをこの惑星の表面と見なすかは難しい問題となっていますが、1気圧になるポイントや視覚的に惑星の構成成分が確認できる雲の上層部分を表面と捉えるのが普通です。

ではこの木星の表面よりも深く入り込んでいくとどうなるのでしょう?

木星のガスの中を降りていくと圧力が急速に増加します。

表面から100km進むと水素はその圧力のため気体から液体に状態が変化します。

液体水素の層をさらに2万km下降すると圧力は300万気圧となり、水素の状態が液体金属になります。

水素は通常の状態では、2つの水素原子が共有結合という方法で結合して水素分子を作っています。共通結合とは原子同士が最外殻の電子を共有することで形成される結合です。これは2つの原子の電子軌道が重なり合っている状態です。

水素の共有結合
水素の共有結合 / Credit:illustAC

しかし、300万気圧という超高圧下では分子や原子がたがいに圧迫され、距離が縮小します。すると分子間で電子の軌道が重なり、電子は簡単に隣の分子に移動しやすくなります。元の原子から離れて自由に動き回る電子によって結びついている結合は金属結合といい、金属結合で結びついた物質は導電性が高いなど金属としての性質を示します。

そのため、木星内部の超高圧下では水素が金属化すると考えられています。そして、木星の自転運動が発電機の働きをするため木星内部の金属水素に電流が流れ、これが木星の強力な磁場を作り出していると考えられています。

金属結合
金属結合 / Credit:illustAC

さらに深く表面から6万kmも深い場所に到達すると岩石状の中心核があります。やっと固体にたどり着くので、じゃあここが表面でも良いんじゃないと思う人もいるかも知れませんが、これは地球で言うところのコアに当たる場所です。

そのためここを地表と考えるのは難しいでしょう。

ここでは圧力は3600万気圧、温度は約2万度です。地球の中心は360万気圧、温度は5000度で超高圧・超高温ですが、木星の中心部はそれに輪をかけて極限的な環境です。

そのため固体の地面を持たないガス惑星と言えど、簡単に深く潜り込んでいけるかというと決してそんなことはないのです。それは地球の地面を掘り進んでいくよりも困難な行為と言えるでしょう。

木星でもオーロラが見える?

木星と地球のオーロラ
木星と地球のオーロラ / credit:NASA/JPL-Caltech/SwRI/John E. Connerney

地球では北極や南極の近くでオーロラを見ることができます。カナダや北欧のオーロラ観賞ツアーは非常に人気がありますね。

驚くべきことに、木星でもオーロラ現象が観測されています

地球からは木星の昼間の面しか見ることができないため、木星のオーロラを地上から観察することはできませんが、パイオニア、ボイジャー、ジュノなどの探査機によって木星のオーロラが確認されています。画像はジュノ探査機によって撮影された木星の紫外線オーロラを地球の紫外線オーロラと比較したものです。紫外線は目に見えませんが上の画像では紫外線の強さを色の違いで表しています。

オーロラは、大気と磁場のある惑星で発生します。太陽から放射される荷電粒子(電気を帯びた粒子)が惑星の大気と衝突することで発生するオーロラ現象は、木星でも同様のメカニズムで起こります

木星の磁場は「磁気双極子モーメント」という量で表すと地球の2万倍の強さがあります。また、木星は大きな磁気圏を持ちます。その大きさは地球磁気圏の100倍以上です。

この強力な磁場は中心部の金属水素を流れる電流により発生していると考えられています。

この強力な磁場のため、木星のオーロラの明るさは地球の100倍、広さも地球の数倍あると言われています。

地球でよく見えるのは緑色のオーロラのですが、木星ではピンク色のオーロラが見えると考えられています。オーロラの色は発光する原子の種類によって異なり、地球では酸素が発光するため緑色に見え、木星では水素の発光でピンク色に見えます。

太陽から放射された荷電粒子が水素原子に衝突すると、衝突のエネルギーによって水素原子の中の電子はより外側の軌道に移動します。そして再び内側の軌道に戻る時にその軌道のエネルギーの落差に応じた波長の光を放射します。

水素原子から放射される光で目に見えるのは赤、青、紫の波長の色です。宇宙空間の水素ガスが発する光は、これらの異なる波長がまじりあった色になります。多くの場合、エネルギーの低い赤色の光量が多いのでピンク色に見えます。例えばオリオン大星雲は水素ガスが発光している星雲で赤みがかった色をしています。木星のオーロラも同じような色合いに見えると考えられます。

将来の木星のオーロラ観賞ツアーでは、水素原子の発光によるピンク色の壮大なオーロラを見ることができるでしょう。

木星のリング

リングを持つ惑星と言えば土星が有名ですが、木星にもリングがあります。「木星型惑星」と言われる木星、土星、天王星、海王星はすべて周囲にリングを持っています。

望遠鏡で見ても木星にはリングは見えません。これは、木星のリングがとても薄いからです。土星のリングは大きな氷や岩石でできているのに対し、木星のリングは小さな塵からつくられているので暗くて地球上の望遠鏡ではほとんど観測できないのです。

実際に、木星のリングはボイジャー1号により発見されるまで、観測されることはありませんでした。ボイジャー1号の観測により木星のリングを構成している塵の成分はケイ酸塩鉱物や炭素質化合物であることが分かりました。

リングの材料となるチリは付近を公転する小さな衛星から供給されています。

小惑星や隕石(いんせき)が木星の衛星に衝突したときに巻き上げられた塵の粒子が木星のリングの起源と考えられています。一方土星のリングは小惑星や彗星程度の大きさの天体が土星に接近した際にその重力で引き裂かれてできたものとされています。

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