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Credit:Katy Clough et al . What no one has seen before: gravitational waveforms from warp drive collapse . arXiv (2024)
physics

ワープはまだ無理だけどワープ検知は技術的に可能と判明

2024.08.07 Wednesday

イギリスのロンドン大学(UoL)で行われた研究により、ワープドライブを搭載した宇宙船の痕跡を現在の技術でも検知できる可能性があることが示されました。

研究では、ワープの理論的な仕組みを検証するとともに、ワープドライブが事故などによって破損した場合に宇宙空間に放たれる重力波のパターンを特定することに成功しています。

もしこの技術が実現すれば、ワープ技術を持った文明が存在するかを確かめたり、宇宙の高速道路の存在を明らかにできるかもしれません。

研究内容の詳細は2024年7月24日にプレプリントサーバーである『arXiv』にて公開されました。

What no one has seen before – simulation of gravitational waves from failing warp drive https://www.uni-potsdam.de/en/headlines-and-featured-stories/detail/2024-07-29-what-no-one-has-seen-before-simulation-of-gravitational-waves-from-failing-warp-drive
What no one has seen before: gravitational waveforms from warp drive collapse https://doi.org/10.48550/arXiv.2406.02466

ワープドライブの基礎理論

大学で物理学を学ぶ学生たちの多くは、早い段階でアインシュタインの記した相対性理論について学び、宇宙のあらゆる物体や現象(重力や磁気も)は「光速を超えない」ことを知ります。

「光速を超えられない」というのは理論だけのものではありません。

実際、これまで宇宙望遠鏡で観測されたあらゆる現象の中に「超光速」は存在せず、相対性理論の信ぴょう性を高めることになりました。

そのため物理学のクラスを受講し終えた大学生たちの多くは、SFなどに登場する「ワープ技術」は完全な夢物語に過ぎないと断言するようになります。

しかし近年の研究により、超光速を禁じる相対性理論をベースにしながら、実質的なワープが理論的に可能であることがわかってきました。

ワープバブルを用いたワープ方法
ワープバブルを用いたワープ方法 / Credit:wikipedia

例えば、現在最も研究が進んでいる「ワープバブル」を使った理論では、宇宙船の周囲の空間の圧縮や拡大といった方法で、実質的なワープを目指しています。

たとえば1光年先の星に行きたい場合、前方の空間を1光年から1kmに圧縮することができれば、簡単に辿り着くことが可能です。

「そんなことは不可能だ」と言う人もいるでしょうが、ブラックホールのような天体では極めて大規模な空間の圧縮が起きていることが知られています。

これまでの宇宙観測で超光速現象が確認されていないのは確かですが、空間の圧縮や膨張を示す多くの証拠が得られています。

ただ空間を伸び縮みさせただけでは、そこを通過する宇宙船も縮尺比に合わせて伸びたり縮んだりしてしまいます。

そのため1光年を1kmに圧縮しても、宇宙船が同じような比率で空間と一緒に圧縮してしまえば、内部の宇宙船にとっての道のりは1光年のままです。

そこでワープバブル理論では外部の空間の歪みから宇宙船を守るためのバブル(泡)を展開するというアイディアが用いられています。

このバブル内部は通常の空間が維持されており、宇宙船はバブルに包まれている間は外部空間の伸縮の影響を受けません。

もっとも、ワープバブルを使ったワープを実現するには、特殊なエネルギー源を見つける必要があるため、現状では実現していません。

しかし先にも述べたように、ワープバブルはそのアイディアの奇抜さの一方で、相対性理論に違反していません。

そのためワープバブルの挙動について、相対性理論をベースにした数値計算である程度予測することが可能となっています。

そこで今回、ワシントン大学の研究者たちは、奇抜なワープ文明の探知手法を思いつきました。

ワープバブルの特性を知ることで、ワープはできないけれどワープしている文明を探そうというアイディアです。

次ページ異星人が起こすワープ事故を検知する

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