異星人が起こすワープ事故を検知する
ワープドライブを成功させるにあたり最も重要なのは、ワープバブルの制御です。
ワープバブルの安定維持は空間を伸縮させるよりも遥かに困難であり、何もしなければすぐに、バブル内部の宇宙船や時空はバラバラに分裂するか、ブラックホールのように中心点に向かって崩壊していくと考えられています。
飛行機やロケットで例えるなら、エンジンや燃料の制御できず、空中爆発が起きてしまった状態と言えます。
そこで新たな研究では、ワープドライブを運用する恒星間文明でも、飛行機やロケットのような事故が起きているはずだと考えました。
異星人がどんなに優れた存在であっても、事故をなくすことはできないはずからです。
また調査対象を「事故」に限定したのにも理由はあります。
ワープバブルは安定して維持されている場合には、重力波などを発さないと考えられており探知することは困難です。
しかしワープバブルが制御を失い崩壊した場合、観測可能な重力波を放出する可能性があります。
そこで研究者たちは数値計算によってワープバブルが崩壊したときに、どのような現象が起こるかをシミュレーションで調べてみました。
先にも述べたように、ワープバブルは相対性理論で説明可能な現象であるため、崩壊したときの影響も相対性理論をベースにした仮想世界で予測することが可能です。
![爆心地から正と負の物質エネルギーが放出されている様子](https://nazology.net/wp-content/uploads/2024/08/7641ce8e6eb955c68765ccf196abc0f1-900x404.png)
すると、ワープバブルの崩壊直後に負の物質エネルギーの波が放出され、その後、爆心地から正と不のエネルギーの波が交互に発せられることが明らかになりました。
上の図はその様子を示しています。
![爆心地から重力波が放出されている様子](https://nazology.net/wp-content/uploads/2024/08/50b9aff5b120175b825e4dd3d3167615-900x408.png)
また崩壊したワープバブルの残骸からは、重力波のバーストも放出され、物質エネルギーの波とほぼ同じ速度で拡散していくことが示されました。
こちらの図では爆心地から重力波が広がっていく様子が示されています。
さらにワープバブルから発せられた重力波は、これまで観測された中性星やブラックホールの衝突によるものと比べて、かなり高周波であることもわかりました。
つまり重力波の周波数を調べることで、それが天体の衝突によって生じたものか、ワープバブルの崩壊によって生じたかを区別することができるのです。
現在の重力波測定装置は主に中性星やブラックホールの衝突など天体の衝突によって生じた低周波の重力波を測定することに特化しています。
しかしより高周波の重力波を捕らえられるようになれば、理論上、ワープバブルの崩壊も探知できるはずです。
もしワープバブル崩壊の痕跡が多い場所を特定できれば、恒星間文明が使用する「航路」や「基地」あるいは「戦場となった場所」を知ることができるかもしれませんね。