ケトルにできる厄介な「水垢(ライムスケール)」
ケトルにできる厄介な「水垢(ライムスケール)」 / Credit:Canva
technology

「水垢」を防ぐコーティングの開発に成功!

2024.02.17 Saturday

水道の蛇口や電気ケトルなど水回りにいつの間にかこびりつく水垢は、カルシウムを含む水が原因であり、石灰(炭酸カルシウム)が堆積することで作られます。

この水垢を掃除して取り除くのは簡単ではなく、家庭では「厄介な問題」として頭を悩ませる人も少なくないでしょう。

水垢の付着は日常生活だけでなく、工業的な設備においてもありふれた問題でありながら、これまで解決されていませんでした。

ところが最近、スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETHZ)に所属するジュリアン・シュミット氏ら研究チームは、そんな水垢を防ぐコーティングの開発に成功しました。

対象の表面に微細な凹凸構造のコーティングを施すことで、石灰が付着して成長することを抑制できたのです。

研究の詳細は、2023年12月20日付の科学誌『Science Advances』に掲載されました。

Innovative coating prevents limescale formation https://ethz.ch/en/news-and-events/eth-news/news/2024/02/innovative-coating-prevents-limescale-formation.html
Imparting scalephobicity with rational microtexturing of soft materials https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adj0324

家庭でも火力発電所でも厄介な「水垢」

家庭でよく見る水垢(ライムスケール)
家庭でよく見る水垢(ライムスケール) / Credit:Canva

電気ケトルなどに付着する垢」は、石灰(炭酸カルシウム)が堆積したものであり、「石灰鱗」や「ライムスケール」などと呼ばれます。

これを取り除くのは簡単ではなく、大抵の場合、酢や特別な除去剤を用いて堆積物を溶かします。

また同様の現象は、火力発電所などの熱交換器でも生じており、この場合は「ファウリング」と呼ばれています。

例えば、ファウリングによって熱交換器のパイプ内にわずか1mmの厚さのライムスケールが付着するだけでも、発電効率は約1.5%も低下します。

この損失を埋めわせるためには、追加で870万トンもの石炭を燃焼させる必要があるのだとか。

これらを考えると、身近な存在である「水垢」は、日常生活から工業施設に至るまで厄介な存在だと言えます。

では、それらが厄介で、なおかつ取り除くのが大変なのであれば、「そもそも表面に付着するのを防ぐ」ことはできないのでしょうか。

残念なことに、ライムスケールの付着を防ぐ研究は、これまでほとんど行われてきませんでした。

しかし今回、シュミット氏ら研究チームはこの課題に取り組み、成功を収めました。

次ページ水垢を抑制するコーティングが開発される

<

1

2

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

テクノロジーのニュースtechnology news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!