他星系との接近が地球軌道に影響を与えていた
他星系との接近が地球軌道に影響を与えていた / Credit:Canva . ナゾロジー編集部
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過去に地球は「他星系との接近」で軌道が乱れ気候変動を起こしていた!

2024.02.22 Thursday

2024.02.21 Wednesday

280万年前に起きたニアミスがヒントとなりました。

米国の惑星科学研究所(PSI)とフランスのボルドー天体物理学研究所(LAB)で行われた研究によって、地球の軌道が他の恒星とのニアミスによって、長期的な影響を受けていたことが示されました。

地球軌道の変化は気候変動を引き起こすと考えられており、地球の気候が太陽系外の恒星の重力によって影響を受けている可能性があります。

研究内容の詳細は2024年2月14日に『The Astrophysical Journal Letters』にて「古気候と太陽系の軌道進化の重要な推進力としての恒星の通過(Passing Stars as an Important Driver of Paleoclimate and the Solar System’s Orbital Evolution)」とのタイトルで公開されました。

Earth’s Orbit Mysteriously Altered by Chance Encounter Million of Years Ago https://www.sciencealert.com/earths-orbit-mysteriously-altered-by-chance-encounter-million-of-years-ago
Passing Stars as an Important Driver of Paleoclimate and the Solar System’s Orbital Evolution https://doi.org/10.3847/2041-8213/ad24fb

気候変動と地球軌道の変化は相関している

今から5600万年前、地球は恐竜が滅んで以降、最大の全球的温暖化に見舞われました。

この時期、地球の平均気温は5~8℃ほど上昇し、陸上では温暖化によって降水量が劇的に増大しました。

軌道モデルをもとにした研究では、当時の地球の軌道が特に偏心したことを示しています。

つまり何らかの原因で地球の「太陽の周りかた」が変化してしまい、劇的な気候変動をもたらした可能性があるのです。

地球の離心率変化の原因の1つに、他の恒星系との接近が考えられます。

太陽系の近傍には複数の恒星が存在しており、ときおりニアミス(近接遭遇)が起こります。

2018年に行われた研究では、太陽から1パーセク(3.26光年)以内を他の恒星が通過する頻度は、100万年あたり20回ほどであると報告されました。

また今後50億年あたりの近接遭遇の影響を計算すると、太陽系から1つ以上の惑星が失われる可能性が0.5%ほどあることが示されました。

これはつまり他の恒星との異常接近によって惑星にある種のフライバイが発生し、太陽系から吹き飛ばされる可能性があるのです。

あるいは確率は僅かなものの、接近した恒星が惑星を飲み込んでしまう可能性も考えられます。

このような劇的な破壊が起こらないにしても、恒星との近接遭遇は惑星軌道に劇的な影響を及ぼします。

具体的な近接遭遇の影響も調べられており、海王星が現在の離心率に変化した原因のおよそ3分の1は、過去の恒星との接近が原因であると考えられています。

地球だけが、このような近接遭遇による軌道変化や続く気候変動から無関係であるとは考えられません。

過去に行われた研究でも、地球の過去の気候変動が地球の離心率の変動と相関していることが示されています。

地球の離心率の変動は主に、太陽系内部にある木星や土星のような巨大惑星の影響を受けており、それらはミランコビッチサイクルと呼ばれています。

木星や土星などの重力の影響により地球の軌道は周期的に歪められます
木星や土星などの重力の影響により地球の軌道は周期的に歪められます / Credit:カリフォルニア大学

しかし他の恒星の近接接近が起きた場合、ミランコビッチサイクルとは異なる「軌道の不確実性」の増加が起こるはずです。

これまでにも過去の惑星軌道の研究はシミュレーションなどによって行われてきましたが、他の恒星の近接接近はあまり考慮に入れられていませんでした。

そこで今回、惑星科学研究所とボルドー天体物理学研究所の研究者たちは、最近に起きた近接遭遇が、地球の軌道変化にどのように影響を与えたかを調べることにしました。

次ページ280万年前に他の恒星が「オールトの雲」まで入り込んでいた

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