実験室で微小重力環境をシミュレートして作られた植物
実験室で微小重力環境をシミュレートして作られた植物 / Credit:University of Delaware
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宇宙でレタスを育てサラダを食べるのは間違った考えかもしれない (2/2)

2024.03.03 Sunday

2024.03.02 Saturday

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無重力状態が細菌感染力を強くする可能性がある

研究者らはさらに、重力が小さい状態でも「植物成長促進根粒(PGPR)」という特定の菌株が、地球上と同様に機能するかどうかを検証しました。

先行研究では、PGPRの一種であるUD1022株を植物の根に生育させた場合、気孔の開きが一時的に抑制されて食中毒菌に対する防御機能の強化すると示されています。つまり地球上では、UD1022株はサルモネラ菌などに対する防御の機能が強くするのです。

微小重力状態ではどうかといえば、残念ながら地球上で有効な根粒菌も、混乱して十分に機能しなくなることがわかりました。

下のグラフで、結果を一つひとつ確認していきましょう。

黒のバーは「UD1022処理をしていない気孔」で、青とグレーは「処理をした気孔」です。

青とグレーには、回転の有無(重力の影響の違い)という違いがあります。青は回転なし、グレーは4RPMで回転させています。つまり、微小重力環境にあるのはグレーです。

UD1022で処理した後、微小重力環境に置いたレタスの平均気孔開口幅。
UD1022で処理した後、微小重力環境に置いたレタスの平均気孔開口幅。 / Credit: Totsline N, et al.(2024)

測定結果は、経過時間(3時間、6時間、9時間)ごとに示されています。どの経過時間においても、青と白は黒より短く、UD1022処理が気孔の開きを抑制していることがわかります。

次に、重力の影響による違いを確認しましょう。青は、時間が経過しても開口幅にほとんど変化がありません。一方のグレーは、時間の経過とともにバーが伸びています。3時間経過に比べると6時間経過では、防御が弱まってしまうのです。

この結果について研究者らは、「サルモネラのような細菌は、微小重力下で変化した植物の状態を悪用し、より効率良く植物を汚染できるようになるのかもしれない」と分析しました。

彼らが提案する対策の一つは、植物の遺伝子調整です。具体的には、宇宙空間でも植物の気孔が過度に開かないよう変化させることが有効ではないかと研究を進めているのです。

現在、デラウェア大学の研究者らは、遺伝学的に異なるレタスの品種を採取し、模擬微小重力下での評価を実施しています。

「気孔を閉じる品種と、すでにテスト済みの気孔が開く品種を比較することで、何が変化しているのかを解明できるかもしれない」

その答えを見つけ出せば、将来的に宇宙産のレタスで作ったサラダを楽しめることになるかもしれません。

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