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Credit:Solomon David
biology

「生きている化石」はDNAレベルでも進化が停止しているのか? (2/3)

2024.03.11 Monday

2024.03.09 Saturday

前ページ「生きている化石」たちのDNA変異速度を調べる

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DNAレベルで「生きている化石」となる種を発見

DNAレベルで「生きている化石」となる種を発見
DNAレベルで「生きている化石」となる種を発見 / Credit:Solomon David

淡水魚ガーパイク(通称:ガー)は恐竜たちが地球上を歩いていた1億年以上前から外見が変化しておらず、古代魚の1種とされています。

古代魚としては3億6000万年前の化石と一致する外見を持つシーラカンスのほうが有名でしょう。

しかしガーたちのDNAの変異速度を調べたところ、100万年あたりわずか0.00009個であることが判明。

この数値は脊椎動物の平均的な変異速度と比べて数百~千倍ほど遅いことを示しています。

また2000万年前に分岐した2つの属を比較したところ、分析されたほぼ全ての遺伝子が完璧に同じ配列を持っていることがわかりました。

さらにテキサス州に生息するガーたちを調査したところ、1億500万年前に分岐した2種のガーたちの間に「生殖能力を持つ雑種」が自然交配によって生まれていることが判明しました。

人類はメガネザルどころか比較的最近分岐したチンパンジーとも子供は残せません
人類はメガネザルどころか比較的最近分岐したチンパンジーとも子供は残せません / Credit:京都大学 . “ふつう”のサルから見るヒトの起源と進化

上の図は霊長類が枝分かれした過程を示していますが、図で最も遠い人間とメガネザルなどの原猿たちでさえ、分岐が起こったのは5300~6300万年前です。

人間はメガネザルどころか、ずっと近縁の600万年前に分岐したチンパンジーとも自然交配で子供を絶対に作れないことを考えると、1億500万年前に分岐したもの同士でそれが可能な、ガーの凄さがわかります。

逆を言えば、1億500万年の時を経ても2種のガーたちの間には、人類で言えば人種程度の違いしかうまれていなかったわけです。

これまでの研究で、異なる2種間で自然交配で生殖可能な子孫を作れる最も古い例は、シダ植物であると考えられていましたが、今回の結果はそれを6000万年も上回ることになります。

この結果は、ガーたちがDNAレベルでもほとんど変化がない、ある意味で「真の生きている化石」と呼べる存在であることを示しています。

これまで生きている化石についてさまざまな研究が行われてきましたが、外見ではなく生物学的な側面で「生きている化石」に到達する方法が示されたのは、今回が最初になります。

しかしなぜガーたちの遺伝子は、時間が経過してもほとんど変化しないのでしょうか?

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