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biology

「生きている化石」はDNAレベルでも進化が停止しているのか? (3/3)

2024.03.11 Monday

2024.03.09 Saturday

前ページDNAレベルで「生きている化石」となる種を発見

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ガーたちは優れたDNA修復能力を持っている

ガーたちは優れたDNA修復能力を持っている
ガーたちは優れたDNA修復能力を持っている / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

なぜガーたちのDNA変異速度は遅いのか?

研究者たちが分析を行ったところ、調査されたガーたちで、ほぼ一貫して変異速度が低くなっていることが判明します。

つまりガーの変異速度の遅さは、環境などの外部的な要因ではなく、ガーたち自身が備えている内部的要因によるものとなります。

研究者たちはこの内部要因の正体が「DNA修復速度の高さ」にあると述べています。

生命には、DNAを変異させる力に抵抗してDNAを修復しようとする力が備わっていますが、ガーたちはこのバランスが修復側に大きく傾いていたのです。

(※近年の研究では、ゾウやクジラなど細胞が多い大きな動物たちが、がんになりにくいのは、高いDNA修復能力のお陰であることが示されています)

また生命のDNAには、DNA内を飛び回ってシャッフルする「ジャンプ遺伝子」が存在しており、変異の原因の1つとなっています。

しかしガーたちのDNAでは、このジャンプ遺伝子の働きも弱められており、変異が抑えられていることが示されました。

研究者たち次の実験ステップとして、ガーたちのDNA修復にかかわる遺伝子をマウスなどに組み込むことで、マウスのDNA修復効率を上げる実験を計画しています。

研究者たちは、ガーの持つ優れたDNA修復能力を医療に応用することができれば、人間にとって有益な薬を作れるだろうと述べています。

というのも、がんや老化の原因はDNAが変異することにあるからです。

もし何らかの方法で、DNAの変異を完全に抑えることができるのならば、理論上、がんも老化も起こらなくなるはずです。

(※ここで言う完全とは進化スケールにおいて、100万年あたり0個の変異という意味に加えて、個体の一生におけるDNA変異率を0%にすることを意味します。)

ただその場合、人類の進化は終焉を迎えることになるでしょう。

DNAが一切変化しない種では進化も起こらず、環境変化にも脆弱になります。

もし変化を拒絶しつつ運よく絶滅を免れることができれば、人類もいつの日か「生きている化石」になれるかもしれません。

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