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ホワイトノイズが脳にダメージを引き起こす可能性

2021.01.27 Wednesday

2018.09.06 Thursday

Point
■出版された論文を精査するレビュー研究で、構造のない非障害性のノイズが耳鳴りを悪化させることが示される
■ホワイトノイズも構造のない音なので、同様に耳鳴りを悪化させ、その結果痴呆に至る可能性があると主張
■著者らの主張に反する実験結果も存在するため、どちらが正しいかは言えない

集中力を向上させたり、精神を落ち着かせる効果があるといわれるホワイトノイズ。

テレビの砂嵐のようにあらゆる周波数成分を同等に含む雑音のことを指し、最近では睡眠導入アプリなどにも採用されて認知度が高まっています。

しかし“JAMA Otolaryngology”に掲載された研究で、ホワイトノイズを構成しているランダムな音にさらされることで、音を感知するように助けている脳の神経接続が変化する可能性があり、耳鳴りや痴呆のようなリスクにさらされる可能性が指摘されています。

Unintended Consequences of White Noise Therapy for Tinnitus—Otolaryngology’s Cobra Effect
https://jamanetwork.com/journals/jamaotolaryngology/article-abstract/2697852

今回の研究では、主に「耳鳴り」に関する学術論文に触れたものです。慢性的な耳鳴りは、音の感知の役割をしている神経が誤って発火することで起こると考えられています。これらの聴覚神経が、発火すべきでない時に常に活性化することで、幻聴が聞こえるのです。

このような過剰な反応は、脳が大きな音や耳の感染症でダメージを受け、死んだ細胞を脳が補おうとして発生することが多いです。実際に多くの場合、耳鳴りには難聴が伴います。耳鳴りや難聴を持つ人たちは痴呆にもかかりやすくなるため、これらの損傷は脳の広い範囲に影響を及ぼすといえます。

しかし研究者は、「耳鳴りが起きる原因は、大きな音などのダメージだけではない」と指摘します。人や動物の実験では、障害性のないノイズへの長時間の暴露でも、神経変化が引き起こされやすいことが示されているのです。その変化には、環境音から人の言葉のような必要な情報を識別する能力を低下させる変化も含まれます。

ホワイトノイズは人の耳で聞き取れるすべての周波数の音を混ぜたものです。著者らは、ホワイトノイズの構造のない音が、耳鳴りの症状を悪化させうると言っています。そのうえ、ホワイトノイズは脳の老化を促進させる可能性さえもあるというのです。ホワイトノイズのようなランダムな情報を与えられることで、脳の悪い方向での再結合が起こるとする証拠も増えてきているようです。

とはいえ、恒常的なノイズが耳鳴りのリスクを高めるという直接の証拠はありません。それにいくつかのマウスの実験では、適度なホワイトノイズは、大きな音が原因の耳鳴りで発生した、脳回路の変化を妨げることが示唆されています。また、2015年にドイツで行われた研究では、ホワイトノイズへの暴露が、少なくとも健康な人では、認知機能への総合的な影響はないことが発見されています。

現在の研究段階において、慢性的な耳鳴りは取り扱うのが難しい複合的な症状です。ただし、ホワイトノイズを少し聞いてすぐに症状が現れるという証拠もまだありません。現状は、あまり過度に恐れることはなさそうです。

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via: Gizmodo/ translated & text by SENPAI

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