研究者を悩ます「口も腸も無い生物」の生存戦略が判明! 扁平動物Paracatenulaと細菌は完璧に共生関係にあった

animals_plants 2019/04/16
Credit: Oliver Jäckle/Max Planck Institute for Marine Microbiology
Point
■Paracatenulaの体内に住む細菌Riegeriaは、化学合成で生産した有機化合物をParacatenulaに与える
■Riegeriaは、栄養素を小さな液滴のかたちにすることで、Paracatenulaに食事を提供することが判明
■Paracatenulaは、Riegeriaを傷つけることなく栄養を得て、しかもその栄養をすべて利用するため排泄が不要

温かい海底の砂の中で暮らす扁平動物Paracatenula。5億年以上前の太古から存在する古株の生物です。

口も肛門も腸も持たないParacatenulaは、体内に住む細菌Riegeriaと共生することで栄養を得ています。「それ自体が腸に見えるよ…」というツッコミがどこかから聞こえてきそうですが、その生態にはさらなる驚きが満ちています。

その仕組みは科学者たちを長い間当惑させてきましたが、最近の研究で、RiegeriaがParacatenulaに栄養を運搬する仕組みが明らかになりました。

Chemosynthetic symbiont with a drastically reduced genome serves as primary energy storage in the marine flatworm Paracatenula
https://www.pnas.org/content/early/2019/04/03/1818995116

栄養体部に住む細菌の化学合成で栄養たっぷり

Riegeriaは、1,000年以上にわたってゲノムを縮小化しつづけ、現在ではごく基本的な機能しか持たなくなりました。細菌Riegeriaは、Paracatenulaの身体のほとんどを満たす特別な組織「栄養体部」の中で生きています。下の写真で白く見える部分が栄養体部で、それ以外の上の部分は透明でスケスケですね。

Credit: Oliver Jäckle/Max Planck Institute for Marine Microbiology

Riegeriaは、光合成の代わりに化学プロセスによりエネルギーを生む「化学合成」を行います。二酸化炭素と硫化水素の反応を利用して有機化合物を作り、それをParacatenulaに与えるのです。これらの化合物には、脂質・タンパク質・糖質・脂肪酸・ビタミンまでもが含まれているのだそう。まさに完全栄養食です。

まるで果樹園 完璧な共生関係

縮小したゲノムの単細胞細菌が複数の栄養素を生み、宿主にそれを提供するという共生のかたちは大変珍しく、宿主への栄養の届け方もユニークです。

化学合成を行う共生細菌にエネルギーを依存することが知られている生物は通常、細菌を消化することでその栄養素を得ます。また、そうした細菌は輸送タンパク質を使って栄養を運びます。

ところが、ParacatenulaとRiegeriaの関係には、これらのメカニズムのどちらも当てはまりません。代わりにRiegeriaは、栄養素を小さな液滴のかたちにすることで、Paracatenulaにせっせと食事を提供しつづけます。このためParacatenulaは、Riegeriaを一切傷つけることなく食べ物にありつけるというわけです。

Credit: pixabay

研究チームの1人であるマックス・プランク研究所のハラルド・グルベール・ヴォディッカ氏は、その様子を果樹園に例えています。Riegeriaが絶え間なく実らせる果物をParacatenulaがぱくぱくと食べるイメージで、見た目からは想像もできない、なんとものどかな感じですね。これに対して、細菌が完全に食べつくされてしまう他の共生形態は、トウモロコシ畑での収穫に例えることができます。

その上、Riegeriaが提供する栄養素は余すところなく使われるため、Paracatenulaは排泄器官を持たなくても問題ありません。

 

両者が欲しいものを手に入れて、どちらも何かを失うことがない共生システムを築いたParacatenulaとRiegeria。持ちつ持たれつのパーフェクトな協力体制ですね。

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reference: sciencealert / translated & text by まりえってぃ

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