深海1万mに強靭な「アルミニウム装甲」のエビがいる

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Credit:DAIJU AZUMA/WIKIMEDIA COMMONS

Point

■深海1万メートルに生息する「カイコウオオソコエビ」は、高い水圧に耐えうるほど強靭な「スーツ」を自ら作り出している

■スーツはジェル状のアルミニウムで出来ており、水圧の緩和だけでなく、外骨格から炭酸カルシウムが漏れ出すのも防いでいた

■カイコウオオソコエビは深海に沈殿する物質を体内で代謝する過程で、アルミニウムを抜き出し、それを使ってスーツを作っていた

アイアンマンも驚きのアーマードスーツ。

深海1万メートルに生息する「カイコウオオソコエビ(学名:Hirondellea gigas)」が、なぜそこまで高い圧力に耐えられるのかが判明した。彼らはどうやら、強靭な「金属補強スーツ」をセルフメイドしているらしい。

工具も溶接器具もない深海で、どうやってそのようなスーツを作っているのだろうか。

研究の詳細は、4月4日付けで「PLOS ONE」上に掲載されている。

An aluminum shield enables the amphipod Hirondellea gigas to inhabit deep-sea environments
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0206710

生息場所は深海1万メートル!

「カイコウオオソコエビ」は端脚類に属するヨコエビの1種で、淡い白の体色、サイズは4.5cmほどの小さな生物だ。

彼らが生息するのは、北大西洋にあるマリアナ海溝の最深部「チャレンジャー海淵」で、水深はなんと1万メートルに達する。地球上でも最も過酷な世界の1つである。

端脚類に属する生物は普通、深海4500mを越えると水圧に耐えきれず押しつぶされてしまう。

さらに水圧だけでなく、低すぎる温度や高濃度の汚染物質により、外骨格に収納されている炭酸カルシウムが水中に溶け出してしまうのだ。

Credit:pixabay

しかし「カイコウオオソコエビ」はこの過酷な環境に耐えうるほど強靭なスーツを着用している。外骨格を覆うスーツは、カルシウムの殻をアルミニウムで補強しているが、そもそも海水にアルミニウムはほとんど含まれない

どこからアルミニウムを入手してきたのか、こうした謎がこれまで研究者たちの悩みの種となっていた。

代謝で作り出される「アルミニウム」

ところが深海に溜まっている沈殿物を調べてみると、豊富なアルミニウムが含まれていることが判明した。おそらくカイコウオオソコエビはこの沈殿物を利用していると考えられる。

そこで研究者たちは、このアーマードスーツ製造のプロセスを解明するためにメタボローム解析を行なった。メタボロームとは、口にした食べ物が代謝される過程で作られる物質(代謝物質)のことである。

Credit:pixabay

すると、カイコウオオソコエビの体内にある「グルコン酸」という化学物質が、沈殿物からアルミニウムイオンを引き抜いていることが明らかとなったのだ。

引き抜かれたアルミニウムイオンはアルカリ性の海水の中に解き放たれて、ジェル状の水酸化アルミニウムに変化する。これがカイコウオオソコエビの外骨格を覆う保護スーツの正体であった。

アルミニウムは深海の圧力を和らげる効果や、さらには外骨格から炭酸カルシウムが溶け出すのを防ぐ効果があるという。

 

それを代謝で作り出してしまうとは…まさに自然の神秘だ。

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reference: marineplastic / written & text by くらのすけ
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