全人類の脳が「誤った現実」を構築しているという説

philosophy 2019/07/27
客観的事実とは?
Credit: depositphotos

Point

■人間が認識している現実は「客観的事実」ではない

■人間の脳は、生存に必要なものを見るために構築するよう進化してきた

■意識こそが神経活動を生み出している

今、目の前に見えている世界は現実なのでしょうか?

あなたに見えている世界と、別の人に見えている世界は、まったく異なるはずです。私たちが今認識しているこの世界は客観的事実ではありません。

たとえば下のイラスト。奥行きがあって、ぐるぐる動いているように見えませんか?

実はこれ、平面的で静止しているイラストなのですが、脳にいくらそう言い聞かせてもやっぱりそうは見えませんね。

Credit: Vectordivider / iStock

カリフォルニア大学アーバイン校で視覚科学を研究するドナルド・ホフマン氏は、自身の新著”The Case Against Reality”の中で、この概念を人間の意識すべて(つまり、私たちがどのようにして周囲の環境を見て、考え、感じ、相互に作用しているか)に当てはめています。彼によれば、私たちは物事をすべて「誤って」見ているというのです。

意識こそが神経活動を生む

「私は、人間の意識的経験と、環境と相互作用する時の意識的経験と身体や脳の活動との関係に関心を持っています。その中には、人間の意識を真似るコンピュータモデルを制作するという技術的挑戦も含まれていて、現在まさにそれに取り組んでいるところです」と、ホフマン氏は語っています。

現代科学のアプローチでは、「ナッツの味」や「赤い色の見え方」といった物事を人間に経験させる神経活動のパターンが存在すると仮説されています。

しかしこれに対しホフマン氏は、このことを説明できる正式な理論は存在しないと主張しているのです。

ドナルド・ホフマン氏 / Credit: UCI School of Social Sciences

「私は一人の科学者として、ある理論を仮定した上で、その有効性を確かめるためにその理論が間違っていることを証明しようと試みます。意識を生み出す神経活動のパターンを説明する数学的理論は1つも存在しないため、私たちは誤った仮定をしているのかもしれません」と語るホフマン氏。

従来の仮説とは反対に、「意識こそが神経活動を生み出している」というのが彼の考えです。つまり、人間はあくまで生存に必要なものを見るように進化してきたということ。これは魂の存在が云々の話ではありません。認識されているものは必ずしも現実ではなく、あくまでもユーザーインタフェースだということなのです。

マーケティング、広告、ファッション…広がる応用分野

この理論の背景には、人間が長い時間をかけて生存と繁栄のためにさまざまな方法で順応してきたという、進化心理学の概念が存在します。

「私たちが自分自身の現実を構築しているという気付きは、その他の幅広い分野にも関連しています。これらの考え方はさまざまな方法で利用できる可能性を秘めています。たとえばマーケティングや広告の分野では、消費者が商品を経験する方法を変えることができるでしょう」と、ホフマン氏は視覚科学が秘める可能性を語っています。

Credit: pixabay

ホフマン氏は実際にファッションブランドに向けて、背中や太もも、胸元などのパーツをより美しく見せるための衣服の勾配の再設計を行っているそうです。また、数学的分析を用いて、ターゲットとする広告にとって最適な色・明暗・構造・構成を決定する取り組みも実践しています。

今、あなたが目にしている世界。それは、あなた自身の意識が作り出した幻想に過ぎないのかもしれません。

意識の存在は「測定」できるの? 今の科学の解答がこちら

reference: news.uci / written by まりえってぃ

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