すべてが科学者の想定外! 解析に3年を要した観測史上最大の超新星爆発

space 2019/08/20
『SN 2016iet』の対不安定型超新星の想像図/Credit: Gemini Observatory/NSF/AURA/ illustration by Joy Pollard

Point

■2016年に観測された規格外に巨大な超新星爆発の解析が3年越しで完了した

■この超新星爆発は太陽質量の200倍もある超大質量星によるものと考えられ、ブラックホールを残すこともなく星全体が消し飛んでしまっている

■これは宇宙初期に存在した種族Ⅱの巨大恒星にのみ発生していた「対不安定型超新星」と考えられ、宇宙の成り立ちを知るための重要な観測例となる

2016年11月に、これまでの観測史上で最大となる超新星が観測されました

3年も前の観測がなぜ今話題なの? と思う人もいるかもしれませんが、この超新星『SN2016iet』の観測データがあまりに常識はずれであったため、データの誤りではないかとずっと解析中になっていたためです。

しかし3年を掛けた追跡観測の結果、『SN2016iet』は桁違いに巨大な超新星爆発であったことが明らかになったのです。

それは実に太陽質量の200倍という巨大な恒星の超新星であり、そのあまりに巨大過ぎるそのエネルギー放出によって、星はブラックホールや中性子星を残すこともなく消し飛んでしまったというのです。

この研究は、ハーバード大学の研究者を初めとした研究チームより発表され、『アストロフィジカルジャーナル』に8月15日付けで掲載されています。

SN 2016iet: The Pulsational or Pair Instability Explosion of a Low-metallicity Massive CO Core Embedded in a Dense Hydrogen-poor Circumstellar Medium
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4357/ab2f92

桁違いの極超新星

新星というのは明るく輝く生まれたての星のことですが、超新星は星の死に伴う爆発の輝きを指します。

この一見紛らわしい呼び名は、初めて観測した人たちが、超新星が何であるのかわからず、新星より明るい天体として名付けたためです。

恒星は巨大な自重による収縮を、核融合のエネルギーによって支えています。重い恒星が核融合の燃料を使い切ってしまうと、自重を支えきれずに重力崩壊を起こして爆発します。これが、一般的な超新星爆発です。

しかし、今回観測された『SN2016iet』はこれまで観測されたものとは桁違いのエネルギーを放つ奇妙な超新星でした。

それは発見した科学者が、データを疑いすぐには受け入れられないほどのものだったのです。

なぜ『SN2016iet』は、それほどの巨大で奇妙な超新星となったのでしょう?

それは、この星が桁違いに大きかったということと、金属が極端に欠乏した星だったことが鍵になっています。

異端? 巨大な星の超新星爆発

太陽の130倍以上巨大な星は、通常とは異なるメカニズムの超新星爆発を起こすと考えられています。

あまりに質量が大きい星は、核の収縮が強いために極端に高温となり、非常に強力なガンマ線を放出するようになるのです。

通常、ガンマ線は星の核に含まれる金属に吸収されますが、金属が極端に少なく、非常に重い星は際限なく強力なガンマ線を放ち、莫大なエネルギーを生み出します。そして、残骸すら残さずに星を消し飛ばしてしまうのです。これが「対不安定型超新星」と呼ばれる現象です。

対不安定型超新星のイメージ。核から強力なガンマ線が放たれ原子核への衝突で電子・陽電子の対生成、対消滅を起こしていく。これは莫大なエネルギーを生み出す。/Credit:NASA/CXC/M. Weiss

また、太陽の200倍という極端に重い星は、核融合のスピードが早く非常に短命です。

この星も、およそ数100万年程度で質量の85%を失い、超新星を起こしたと考えられています。

この大量に周囲へ撒き散らされた物質と、爆発の破片とが衝突を起こしたため、この超新星は観測上、奇妙な見た目になったのだと推測されています。

宇宙初期に生まれた恒星の死の様子

この星の「極端に重い」「短命」「金属に乏しい」という条件は、すべて初期宇宙で誕生したとされる種族Ⅱの恒星の特徴と一致します。

種族Ⅱとは、宇宙誕生後の第2世代に当たる初期の恒星のことです。(星の種族や年齢についてはこちらの記事を参照)

ただこの星は、地球から約10億光年離れた金属に乏しい矮小銀河から見つかっており、本当に第2世代の星である可能性は低いでしょう。

金属が乏しい矮小銀河は、重金属が生まれる前の初期宇宙に非常に酷似しています。そうした環境から、初期宇宙の恒星と同じ様な星が生まれ、それが珍しい超新星を起こしたのだと考えらるのです。

また、この星が見つかった場所は、そんな矮小銀河の中心から5万4千光年離れた辺境でした。これも奇妙な点で、星や星間物質の密集していない銀河の辺境に、これだけ巨大な天体が存在した理由は未だに不明です。

しかし、この事実は観測上、非常に重要な価値があります。

Credit: Gemini Observatory

通常超新星を起こす天体は、星の密集した銀河中心部の眩しい領域で見つかるため、数ヶ月ほどで輝きを失ってしまった後は、もう痕跡を追うことができなくなります。

ところが、今回発見された巨大な超新星は、なぜか銀河の辺境に存在していたために、発生から数年が経過したあとでもその残光を観測し続けることができるのです。

この超新星は、宇宙初期の星がどの様な生涯を送り、死んでいったかを知るための貴重な観測例なのです。

「対不安定型超新星」も理論上の現象で、明確に観測されたのはこれが初となります。過去にも候補となる観測は行われていましたが、先に語った通り数ヶ月ほどしか観測できないため、詳細な様子を知ることができません。

天文学者たちは、「この天体からさらに多くの事実を見つけ出せるだろう」と、興奮気味に語っているそうですよ。

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reference:GEMINI,CNN,Phys/ written by KAIN

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