どこでも満天の星が見られる移動式「プラネタリウムテント」!  制作奮闘記を開発者にインタビュー

culture 2019/10/02
Credit: 猪俣慎吾

天の川って知ってる? と言われたら、多くの方が知っている、と答えることでしょう。

でも、実際に天の川を見たことってありますか?

「星のソムリエ®」として観望会で解説をしている筆者ですが、お客さんに聞いてみると、知識としては知っていても見たことがない方はとても多いです。

天の川というと、七夕の織姫と彦星をへだてる川として、夏の夜空に見える印象が強いですが、見やすいだけで本当は年中出ています。

しかし、現実的には街の灯りが明るすぎる「光害(ひかりがい)」のせいで、地方や海外に行かないと見ることができません。筆者の場合もはっきりと認識できたのは、ここ10年以内のことで、伊豆諸島の御蔵島やモンゴルといった、なかなか行けない場所。

そんな天の川を多くの人に見て欲しいという想いから、移動式のプラネタリウムプラネタリウムテント』を開発し、本業の傍ら、全国行脚で上映を行っている方がいます。開発者の名前は猪俣慎吾さん。筆者と同じく「星のソムリエ®」でもあります。

今回は実際に見せていただいたので、どのようなものかご紹介します。また、開発秘話や上映活動についてもお聞きしました。

プラネタリウムテントと猪俣さん

猪俣慎吾さんのプロフィール

本業:フォトグラファー

副業:キャンプコーディネーターと、週末はプラネタリウムテントの運営

キャンプを「文化」にするべく活動する傍ら、自分の好きな「宇宙や星」をキャンプにつなぐことかできないかと、全天候型の『プラネタリウムテント』を開発。現在はキャンプのイベントでプラネタリウムテントを使用して全国をまわっている。

プラネタリウムテントで、星空を見てみよう

何よりもまずは体験から。プラネタリウムテントで星を「観望」させていただきました!

はじまりはプログラムの上映から

最初に10分間ほど、天の川や星空などの説明が投影がされます。いきなり暗くして星を見ても、暗いところに目が慣れるまで時間がかかるのでよく見えません。つまり、星の予備知識をお客さんに知っていただくとともに、星をきれいに見せるための準備時間でもあります。

このプログラムは、今後季節などにあわせて、バリエーションを増やしていくそう。興味のある人は参加できるとのことで、筆者もプログラムを考え中です。

銀河系についての説明

大人数でいても、テントは快適

テント本体は直径6m、高さ3mで広々。立っても圧迫感はまったくありません。また、床にはゴム製のマットがしいてあるので、心地良い座り心地。

座った態勢だと30人が同時に見ることができますが、投影するときに影ができてしまうので、真価を発揮するのは寝転がった状態だそう。寝転んでも20人が同時に見ることが可能です。

寝転んで、360度の視界に星を見る

ということで、プログラムが終わったらテントの中央に頭をむけて、同心円状に広がるようにみんなで寝転がりました。

「目を閉じてください」という猪俣さんの言葉に皆で目を閉じ「開けてください」という言葉にあわせて目を開きました。

目の前に、燦然と広がる満天の星と天の川が!

皆で寝転がっている様子。360度星に囲まれています。

わー!という感嘆やため息とともに、さまざまな感想が飛び交います。

星に包まれているみたい…

手が届きそうなほど、星が近い!

宇宙空間の中にいるみたい…

なかでも、「鼻血が出そう!!」といっていた、子どもさんの感想が印象的でした。

また、テントで見られるプラネタリウムで、ここまで美しい星が見えるのかということに驚かれるお客さんもいました。

それに、プラネタリウム投影時間の25分~30分間で、星を見ながら猪俣さんが解説をしてくださるのですが、「普通のプラネタリウムと違い、解説員との距離が近いのもいいですね」という感想もありました。すぐその場で疑問がでてきたら質問をして、答えを返してもらうのは、普通のプラネタリウムでは難しいですからね。

Credit: 猪俣慎吾

どれくらい星を投影できるのか?

プラネタリウムの投影機器は、大平技研の『メガスタークラス』を使用しています。180度全方向に100万個の星空を投影することが可能なのだそう。

上映では、星が動いて1周するのを15分で見ることや、北緯35度の場所なら他の国の星空も見ることができます。また、全体を明るくして、都会で見られる星の設定をするなんてことも。

本体のサイズは190mm×240mmで、まるで空気清浄機や熱風フライヤーのような外観。持ち運びできるコンパクトさです。

大きさ比較のため、手を横に置いていただきました。

プラネタリウムテントの開発秘話

それでは、プラネタリウムテントはどのように作られたのでしょうか? 猪俣さんにインタビューをさせていただきました。

——プラネタリウムテントを始めたきっかけは何ですか?

星が好きで、多くの人にも魅力を知ってもらいたいと「星のソムリエ®」になったのですが、天の川を見せたいと思っても、見せる機会がなかなかありません。気象条件が良くない日が多いですし、都会では光害もありますしね。

そんなとき、小型でクオリティが高いことで知られるプラネタリウム、『メガスタークラス』で星を見て、とても感動しました。しかし、価格は140万円ほどと、個人で購入する金額ではないと躊躇したのに加え、仮に購入しても、室内だと壁がでこぼこしているため、ピントずれが起きてきれいに見えません。

しかし、キャンプ業界の仕事をしていることもあり、「ドーム型テントを遮光して投影すればピッタリなのではないか。移動式プラネタリウムが作れるかもしれない」と思い付いたことが開発のきっかけです。

——制作にあたって苦労したことは何ですか?

さっそく、あるテントメーカーにドーム型テントの見積もりをとったところ、200万円と言われてしまい、既存のテントを自分で改造できないかと思いました。

ちょうどサイズがピッタリなテントがあったので、複数のパーツに裁断し、それぞれの型紙を作り、遮光生地を切り抜きました。遮光生地を67mは使用しましたね。そしてまち針をうち、ガンタッカーで貼り付けていきました。

そのあと、針穴をふさぐために特殊なテープを貼り、さらに透け防止のため、黒のシルクスクリーンを上から塗りました。1人で延々と気の遠くなる作業で、正直、二度とやりたくないですね(笑)。

手作業による、孤独で地道な作業…。
仕事場のスタジオがえらいことになっています。
テントに埋もれるミシン…。

2018年の11月、5ヵ月の末にようやく完成し、『メガスター』を開発された大平技研に行って、上映を見てもらいました。すると、「こんなにきれいに星が見えるんですね…!」と感心していただき、機器の開発者の方々も納得するできになったので、これなら大丈夫だと思いました。

また、活動していくなかでブラッシュアップしていっています。夏になると、テントが黒いこともあって暑いので、上から遮熱シートでタープを張るようにしましたし、スポットクーラーも設置しました。

——プラネタリウムテントならではのメリットとは?

やはり、寝転がるので視界を邪魔するものがなく、360度広がる星空を見られるので、臨場感があります。

また、余程ひどい天気でなければ、天候を気にする必要がありません。雨音を聴きながら、星を見るなんてこともできちゃいますよ。

もちろん、さまざまな場所で上映できるのもポイントです。直径8メートル四方のスペースがあれば、設置は可能ですよ。驚かれるのですが、組み立て自体は私1人で可能で大体1時間、機器の設定などを含めると、準備は2時間ほどでできてしまいます。

Credit: 猪俣慎吾 組み立ての様子

上映の活動は、どのようにして行っているのか

——これまで、どんなところで上映されましたか。

新潟県長岡市にある、おぐに森林公園の『ParrMarkキャンプ』や、東京都八王子の滝ケ原運動場野球場で開催された『WOOD STOVE FES 2019』、埼玉県比企郡の国営武蔵丘陵森林公園で開催された『ハッピースプリングパーク2019』、福岡県福岡市にある舞鶴公園・鴻臚館(こうろうかん)広場で開催された『アウトドアデイジャパン 福岡』など、全国各地で上映してきました。

Credit: 猪俣慎吾『WOOD STOVE FES 2019』にて。
Credit: 猪俣慎吾『ハッピースプリングパーク2019』にて。

直近では静岡県にある、ふもっとっぱらキャンプ場の『フィールアース2019』や、滋賀県のびわ湖バレイでの『びわ湖天空フェス2019』、そのあとに出版社さんからの依頼で、北海道の上川町に行きました。

——イベントはお客さんが多くて大変そうですが、どのようなスケジュールなのでしょう?

『フィールアース2019』では、1日30分のタイムスケジュールで、朝10時半から夜21時までの間に、9回の上映で操作と解説を行いましたよ。お客さんには、15人ずつ入っていただきました。

Credit: 猪俣慎吾『フィールアース2019』にて。

——大盛況ですね! しかし9回転とはハードです。お客さんもいろいろな方がいらっしゃいそうですね。

そのときの客層に応じて、投影と解説は少しアレンジしていますね。また、最初に興味を持つのは子どもさんが多いですが、集中して星に見入ったり、機械に興味を持たれたりするのは大人の方が多い印象です。

これからの展望

——今後は、どのようなところで活動をしていきたいですか。

病院で上映できないかと考えています。エアドーム型のテントだと、車いすの方が入るときに沈んで危ないのですが、プラネタリウムテントでは、そのまま入ることができるんですよ。

また、児童養護施設でボランティア上映も行っていきたいですし、自分のキャリアもかねて、キャンプ場での上映は続けていきたいです。キャンプ業界も盛り上がってほしいですから。

それに、野外イベントは全国各地でありますが、星関係が出店されていることってなかなかないので、プラネタリウムテントを通して、多くの方に天の川を見ていただけたらいいなと思っています。

今後の活動について語る猪俣さん

——さらなる展望について教えてください。

星に関係する業界の人といろいろなことをやりたいと思ったのも、開発を考えた理由の1つです。プラネタリウムテントでの解説員を増やすといった「星のソムリエ®」の活躍の場のひとつにすることなどを考えています。

でも、星と関係のない業界でも、一緒にやりたいという方がいらっしゃれば歓迎です! ほかには、自分でもプラネタリウムテントを1からやってみたいという方がいらっしゃれば、ゆくゆくは「建て方講座」のようなものをやってもいいかなとも考えています。そうして全国に広まっていくのが希望ですね。

——確かに最近はヒーリングを主に置いたプラネタリウムも流行っています。音楽やアロマも入れて、マッサージの業界と組む、なんてのもありかもですね。

そうそう、プラネタリウムの上映だけでなく、プラネタリウムテントは映画の上映などにも使えますしね。

業界をもりあげるには、1つの業界という点ではだめで、点と点をつなぐのが大事だと考えています。さまざまな業界とのコラボレーションが考えられますし、組んだら思わぬ面白いものもできるかもしれませんよね!

——そうして伝えた感動が、また新たなことに波及していきそうですね。

そうですね。天の川を見たことがある人がほとんどいないので、見てもらいたいという想いからプラネタリウムテントが生まれたので、「プラネタリウムテントで見ても、天の川はこんなにきれいなのだから、実際に見てみたい」という、外に向かうきっかけになるといいです。

でも、それは星に限らなくていいと思っています。プラネタリウムテントで美しい星空を見たことを通して、アウトドアへの興味でもいいし、星空の下で美味しいご飯を食べたいということでもかまいません。

つまり、プラネタリウムテントはこれまでになかったものですから、新しい扉を開くきっかけになればいいなと思っています。見た方の世界が広がってくれれば、嬉しいですね。

Credit: 猪俣慎吾

今後のイベント情報

なお、実際にプラネタリウムテントを見てみたいという方は、以下のイベントで出店される予定ですので、行ってみてはいかがでしょうか。

2019年10月5日(土)~6日(日)

SOTO×GARVY キャンプで会いましょう2019

うるぎ星の森オートキャンプ場 長野県下伊那郡売木村2653-3

2019年10月13日(日)

ただテントがならんでいるだけなのに

どやまらんど明日キャンプ場 富山県黒部市宇奈月町浦山土山133

2019年10月26日(土)~27日(日)

GIMME 5 CAMP 2019

青川峡キャンピングパーク 三重県いなべ市北勢町新町614

2019年11月9日(土)~10日(日)

第5回OUTDOOR PARK in SAITAMA

国営武蔵丘陵森林公園 埼玉県比企郡滑川町大字山田1920

また、直接こちらの連絡先に、上映の依頼や相談をすることも可能ですよ!

E-mail:[email protected] Facebook: https://www.facebook.com/shingo.inomata

なんと、先日は滋賀県のびわ湖バレイでの上映の際に依頼され、その足で敦賀からフェリーに乗り、北海道の上川町へ行かれたという猪俣さん。全国行脚して星の魅力を広める熱意には、頭が下がるばかり。そんな「プラネタリウムテント」は、一見の価値ありです。

Credit: 猪俣慎吾

「星のソムリエ®」が国立天文台野辺山の見どころを紹介します

Reference: 大平技研 / written by ofugutan

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