
世界最初の海上ホテルは、1988年にオーストラリアで誕生しました。
同国の港湾都市タウンズビル沿岸から70km離れた環礁近海を浮かんでいたホテルは、オープン当初から多くの人気を呼び、一時は5つ星も獲得していたほどです。
あれから30年、海上ホテルは同じ場所にはありません。なんと現在は、1万4000kmも離れた北朝鮮に浮かんでいるのです。
絶大な人気を誇った海上ホテルは、一体どんな紆余曲折を経たのでしょうか。
「環礁を眺めて暮らしたい」考案者の夢が現実に
海上ホテルの考案者ダグ・タルカ氏は、オーストラリアの都市開発を担当するメンバーでした。
ダグ氏は90年代に亡くなっていますが、建設プロジェクトにも参加した実子のピーター・タルカ氏は「父はオーストラリアの海に浮かぶ美しい環礁に強く魅せられていました。その眺めを人々と共有したいと強く願っていたのです」と話します。
当初の計画は、3隻のクルーズ船を環礁に常時係留するだけの予定でしたが、現実性もなく、安全面にも欠けるため、却下されました。代わりに、採用されたのが、「世界初の海上ホテルを作ろう」という案だったのです。

こうして、1988年の3月に、世界第一号の海上ホテル「バリア・リーフ・フローティング・リゾート」が誕生しました。
7階建に200近くの個室を完備し、テニスコートやナイトクラブ、バー、ヘリポートまで備わっていました。
当時、海上ホテルで働いていたベリンダ・オコナーさんは「ホテル内で開かれたパーティーやダイビング、ヘリで運ばれたピザなど、あの素晴らしい日々を今でも覚えている」と話します。
しかし、幸せな日々はそう長くは続かないものです。