- 恐怖や驚きを感じた時に身体が硬直し、震え始める反応は、体内の「セロトニン」放出が原因と判明
- ハエを用いた実験で、セロトニンを放出した個体は他に比べて動きが急に遅くなっていた
暗闇の中の物音や突然の地震など、人は潜在的な恐怖に直面すると身体が硬直し、小刻みに震え始めます。
誰でも一度は経験したことのあるこの驚愕反応は、人のみならず、虫や魚を含むほとんどの生き物に見られます。それにもかかわらず、驚愕反応の科学的な原因はこれまで不明でした。
しかしこの度、アメリカ・コロンビア大学の研究により、驚愕反応を引き起こす原因は、体内の「セロトニン」という化学物質であることが判明しました。
また、一時的な身体硬直には、れっきとした重要性があるようなのです。
研究の詳細は、11月27日付けで「Current Biology」に掲載されています。
https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(19)31382-X?_returnURL=https%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS096098221931382X%3Fshowall%3Dtrue
驚愕反応の原因は「セロトニン」
人や動物は、潜在的な恐怖や脅威にさらされると、最初に身体が硬直して震え始め、その後、安全な場所に移動します。研究チームは、驚愕反応を引き起こす原因を特定するため、ハエを用いた実験を行いました。
まず、複数のショウジョウバエを「FlyWalker」という特殊な装置の中に入れて、歩行の変化を観察します。FlyWalkerは、研究チームが独自に開発しており、特殊なガラスの中にいる虫の足取りをトラッキングする装置です。
その後、ハエに驚愕反応を引き起こす2つのシナリオを実験しました。
1つは「ブラックアウト現象」で、容器内の電灯を急に落とし、真っ暗闇の状態を作ります。もう1つは「アースクエイク現象」で、ミニチュアの砂地を用意し、その上にいるハエに地震に似た振動を与えます。
その結果、どちらの場合でもハエは一時硬直を引き起こし、体内における「セロトニン」の急激な上昇が見られたのです。セロトニンを放出したハエは、動きが急に遅くなるか、完全にストップします。
下は、通常時のハエとセロトニンを放出したハエのスピードを比較した映像です。(下がセロトニンを放出している個体)
研究チームは、他にも温度変化や空腹状態、逆さまに歩いている時など、ハエがセロトニンを放出するシチュエーションを特定していますが、上記2つのシナリオの場合に最も高いセロトニン放出が見られています。