驚愕反応は恐怖への準備?
分析の結果、セロトニン放出は、ハエの「腹側神経索(VNC=ventral nerve cord)」で起こっていました。VNCは、脊椎動物の脊髄に当たる場所です。
研究主任のリチャード・マン教授は「セロトニンの放出が驚愕反応の引き金となっていることは明らか」と話します。
「ハエにおいては、セロトニンが身体硬直を起こし、反対にVNCの活動を鎮めると動きが加速しました。セロトニンは、人体にも存在する化学物質であり、これが一連の身体反応の原因である可能性はきわめて高い」と説明しています。
特に人において、セロトニンは、感情や気分の調節に最も密接に関係している物質です。
マン教授は「セロトニン由来の一時硬直は重要性がある」と指摘。「おそらくこの間に、全神経システムを急激な環境変化についての情報収集に費やし、次に取るべき対処行動の準備をしている」と続けています。
ハエに関して興味深いのは、ブラックアウト後の動きは緩やかに再開したのに対し、アースクエイク後は急加速して移動したことです。これは停電時と地震時の人の反応に類似しています。
ハエも停電と地震では、体感している潜在的恐怖が異なるのでしょう。チームは今後、同じ結果が人を含む他の動物にも見られるか研究を進める予定です。