君が疲れるまで走るのをやめない「人類は持久走で獲物を捕らえていた」
君が疲れるまで走るのをやめない「人類は持久走で獲物を捕らえていた」 / Credit:clip studio . 川勝康弘
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君が疲れるまで走るのをやめない「人類は持久走で獲物を追い詰めていた」

2024.05.19 Sunday

どこまでも追い続けます。

カナダのトレント大学(Trent University)で行われた研究により、エネルギーコストの実践的な計算が行われ、ランニングをしながら行われる人類の「持久狩り」が、他の狩りを上回るエネルギー効率をもっていたことが示されました。

人類の肉体も持久狩りに特化した進化をしていることから研究者たちはおよそ240万年前から人類は疲れて動けなくなるまで追い続け、トドメをさしていたと結論しました。

24時間で160キロを走破するウルトラマラソンやトライアスロンのような過酷な持久戦をスポーツとして楽しむ能力は、人類を地球の覇者に追い上げたと言えるでしょう。

研究内容の詳細は2024年5月13日に『Nature Human Behaviour』にて発表されました。

Did humans evolve to run long distances? https://www.zmescience.com/science/news-science/did-humans-evolve-to-run-long-distances/
Ethnography and ethnohistory support the efficiency of hunting through endurance running in humans https://doi.org/10.1038/s41562-024-01876-x

人類は「持久狩り」にあわせて肉体を進化させてきた

人間の身体能力は他の動物と比較すると、それほど優れているわけではありません。

私たちは最速でもなく、最強でもありません。

しかし、持久力に関しては、私たち人間は動物界でトップクラスの能力を持っています。

たとえばウルトラマラソンでは、選手たちが24時間で160キロメートル以上を走ることも珍しくありません。

これは他の動物には見られない持久力です。

ウルトラマラソンの世界ランカーは24時間で250キロ以上を走ります
ウルトラマラソンの世界ランカーは24時間で250キロ以上を走ります / Credit:clip studio . 川勝康弘

鹿や馬や象そしてそれらを狩るライオンやチーターは人間よりも早く走ることが可能ですが、24時間に渡り走り続けるような能力はありません。

実際、人間の持久力に匹敵する動物はほとんど存在しないと言っていいでしょう。

なぜ人間は持久力だけが突出して高くなるように進化したのでしょうか?

トレント大学の研究者たちは、人間の持久力が進化した理由について興味深い研究結果を発表しています。

研究者らは、1500年代から2000年代にかけて、世界中の先住民族によって行われた「持久狩り」や「持久走狩猟」と言われる狩猟法に関する記録を調べました。

「持久狩り」とは獲物が疲れて動けなくなるまでひたすら追い回す狩猟法です。

この狩猟法のターゲットにされた獲物たちは、水を飲んだりエサを食べたりする暇を許されず、文字通り死ぬまで追い続けられます。

すると世界中の272カ所から400件余り「持久狩り」に関する情報が得られました。

対象となった地域は熱い地域、寒い地域、湿った地域、積雪がある地域など実にさまざまでした。

持久狩りは人類を世界中に広げる要因にもなりました
持久狩りは人類を世界中に広げる要因にもなりました / Credit:clip studio . 川勝康弘

これらのデータは、人類にとって耐久狩猟は極めて一般的な狩猟法であることを示しています。

では、エネルギーの観点からみて、持久狩りは有用な手段だったのでしょうか?

これまでの研究でも、人類は持久力を武器にしてきたという言及がみられましたが、消費エネルギーの観点からそれが収支にあった狩猟法であるかは疑問視されていました。

そこで新たな研究では、さまざまな地域で行われる持久走によって消費されるカロリーと、狩猟に成功した場合に得られるカロリーの差が計算されました。

すると驚くべきことに、走りながらの持久狩りの効率が他の狩猟法と比べて同等かそれ以上に効率的であることが示されました。

また新たな研究ではウォーキングとランニングの「実践的」なコスト差も調べられました。

というのもランニング追跡によって節約できる時間は、実践的な狩りでは大きな影響を与えるからです。

たとえば歩くと 4 時間かかるところを、ランニングで 2 時間節約できるとしたら、費やした時間に対する純利益率はほぼ 2 倍になります。

余った 2 時の間に追跡者は、別のもっと効率のいい獲物を見つけたり、他の重要な活動に投資したりもできます。

交代で休むことができれば、一方的に人類側だけが疲労を回復させることもできます。

経済的な観点から言えば、これは機会費用の利点です。

研究ではランニングによって得られた時間的な余裕を考慮に入れた計算が行われたところ、ウォーキングとランニングの正味のコスト差はほぼないことが示されました。

以上の結果から研究者たちは、長距離ランニングを取り入れた「持久狩り」は人類にとって標準的な狩猟法であったと結論付けています。

具体的には、持久狩りを主要な狩猟法としてきた結果、人類は体温調節を改善するための発汗量の増加、より効率的なエネルギーの貯蔵と放出のためのアキレス腱の発達、さらには持続的な有酸素活動のための呼吸器系の変化など、さまざまな生理学的および解剖学的特徴の発達に影響を与えたと考えられます。

マラソンやウルトラマラソン、トライアスロンなど極めて高度な持久力を要する競技が存在するのも、人類が持久狩りにあわせて肉体を進化させてきた結果だと言えるでしょう。

君が疲れるまで走るのをやめない「人類は持久走で獲物を追い詰めていた」のコメント

ゲスト

走って追いかけて考えて、その考える力が人間の強さですよね。体力切れを待つという思考、作戦。
自然界ではない事なんだろうけど、もし他の走る事が得意な動物が体力持久力を鍛えたら、人類が勝てるのだろうかと、ふと気になる。

名無し

確かに、マラソンだのジョギングだの、特に必要性もないのに只管好んで走り続ける動物は人以外に見当たらない❗

    ゲスト

    ハムスターに謝れ!

華ちゃん

人間のエネルギーの産生が糖質ではなくてケトジェニックであると云うことにたいしてとても納得できる証明でした。
なるほどです‼️

edge

だから企業戦士は24時間戦えるのか。

    ゲスト

    持久競技やってる側からすると水や食料の携行への言及や視点がないのが気になる。携行や補給なしだとランニングなんて他の動物と同じく短時間で終わるぞ。

龍神

動物が疲れるまで走って捕まえるという考えを持てるのは人間はすごいと思う

ラクダ

私に勝てるかな?

ゲスト

リターンが大きければ粘着してコストをかけ続ける変態フレンズなんだね、ギャンブルなんかはある意味狩猟本能を刺激されているのかな?

ゲスト

働きたくないでござる

ゲスト

人間より大きい動物は放熱の問題で長時間運動できない。人間より小さい動物はエネルギーの量で長時間運動できない。

人間が2足歩行して風に対する断面積(放熱量)が大きいことも一因では。

ゲスト

だから痩せるのに苦労する

ゲスト

勿論、相手に見つからない、襲われないことを前提にしているので、何でも追いかければ良いわけじゃ無い、あほかw

ゲスト

人間から逃げる動物ってどれくらいいるんだろう
ある程度追い詰めたら反撃されそうな気もするが…

    ゲスト

    その時は逃げる!
    相手が疲れて動けなくなってからが勝負だ!

ゲスト

渡り鳥とか回遊魚どうなんでしょ

人間でも真似したらばてて墜落または溺れそうですが

ゲスト

交代で休む…追跡を交代?
どういうことなんだ

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