- 大腸菌とアシネトバクターが、同じペトリ皿で成長すると、花びら模様のように広がることが判明
- 成長の速いアシネトバクターに対し、成長の遅い大腸菌の抵抗力が作用することで、花模様を形成していた
ここに2種類のバクテリアがあります。
1つは「大腸菌(E.coli )」で、成長スピードは遅いですが、かたまりで安定して大きくなります。もう1つは「アシネトバクター(A.baylyi)」で、成長が速く、24時間以内でペトリ皿全体を一杯にします。
それでは、これら2種のバクテリアを同じペトリ皿の中に放置したらどうなるでしょう。
その答えは、アメリカ・カリフォルニア大学の研究により、明らかにされました。なんと2種のバクテリアが、花びら模様を作るように成長していったのです。
一体どのような秘密が隠されているのでしょうか。
研究の詳細は、1月14日付けで「eLife」に掲載されています。
https://elifesciences.org/articles/48885
花模様のメカニズムとは?
この発見は偶然の出来事でした。研究主任のLiyang Xiong氏は「2種のバクテリアは、別の目的のために混ぜられましたが、ある朝、研究室に行くと、ペトリ皿に不思議な花模様が広がっていたのです」と話します。
その後、チームはバクテリア同士がどのように反応して花模様を作るのか調べるため、バクテリアの成長速度や形態変化を観察しました。その結果、次のような仕組みが明らかになっています。
まず、アシネトバクターの成長が速いのは、線毛(pili)という細い毛を持っているからです。それらが足のように働くことで、素早く広がっていきます。反対に、大腸菌には線毛がなく、運動性がありません。よって、成長は遅くなります。
そして、ペトリ皿の中の動きを見ると、大腸菌が外向きに広がっていくアシネトバクターの上に抵抗している様子が見られました。この大腸菌の抵抗が、アシネトバクターの広がりを不安定にしていたのです
アシネトバクターは、大腸菌が少ないところで素早く広がりますが、高濃度に集まっているところでは成長が阻まれます。こうした、両者の特性が芸術的な花模様を生み出していたのです。
一方でこの発見は、単なるバクテリア・アート以上に学問的な有益性もあります。
バクテリアの成長パターンの研究は、ここ十数年間で発展していますが、その多くが単一のバクテリアに関するものです。しかし、自然界にいるバクテリアは、一般的に複数のコミュニティーを作り、共存しながら生きています。
よりリアルなバクテリアの生態を理解するためにも、今回の発見は貴重なものとなりそうです。