再生医療に光!心臓すら再生できるウーパールーパーの「再生遺伝子」を2つ特定

science_technology 2020/01/30
ウーパールーパーの再生能力は脊椎動物のなかでも最強/Credit:depositphotos
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  • ウーパールーパー(メキシコサンショウウオ)は脊椎動物のなかで最強の再生能力をもっている
  • この再生能力にかかわる遺伝子を2つ特定

脳梗塞は治る病気になるかもしれない。死滅した脳細胞が再生、運動機能の再生などにも期待高まる

これまでの研究から、メキシコサンショウウオ、通称ウーパールーパーには優れた再生能力があることが知られており、手足の全部、または心臓や脳の一部を失っても完全に再生することができます。

その再生能力は、研究者も「殺されない限り、ほとんどすべての傷を再生する能力がある」と称賛するほどです。

もしこの再生能力の秘密を見つけることができれば、人間の損傷した組織を修復する方法を見つけることができる可能性もあります。

しかしウーパールーパーの研究は、ヒトの10倍(320億塩基対)に及ぶ多すぎる遺伝子のせいで、遅々として進みませんでした。

ですが今回、複雑なゲノムを回避して、新たに再生にかかわる遺伝子を発見することができました

研究結果は、イェール大学のルーカス・D・サノール氏らによって1月28日に学術雑誌「eLife」で報告されました。

Multiplex CRISPR/Cas screen in regenerating haploid limbs of chimeric Axolotls
https://elifesciences.org/articles/48511

ウーパールーパーの再生力

ウーパールーパーの顔の左右に生えているのは、むき出しになったエラ器官/Credit:depositphotos

両生類は子供のときはオタマジャクシのようにエラ呼吸を行い、大人になると肺呼吸に切り替わります。

しかしウーパールーパーは同じ両生類にもかかわらず、大人になってもエラ呼吸のまま。このように大人になっても幼体の性質が残る現象のことを、幼形成熟(ネオテニー)と呼びます。

ちなみに頭の付け根付近にあるフサフサした構造物は、外部に露出したエラです。

また、特筆すべきはその再生力。傷跡を残すことなく手足、尾、エラを再生できるほか、心臓や脳の一部を切り取っても再生できることが知られています

この再生プロセスは、遺伝子によって厳密にコントロールされており、これを詳しく調べることで人間の再生医療にも転用できると期待されています。

ゲノム編集技術「CRISPR-Cas9」を応用する

遺伝子を壊されたウーパールーパーの手を切り取って、再生するかを試した。再生にかかわる遺伝子が壊されていれば、手は再生することはない。図のように再生した場合、その遺伝子は再生とは関係ないと言える:Credit:eLIFE

これまでの研究では、遺伝子の働きを調べるためには、ウーパールーパーの遺伝子を変異剤を用いてランダムに破壊するしかありませんでした。

破壊された遺伝子が再生にかかわるものであれば、ウーパールーパーは手足の再生ができなくなります。

しかしウーパールーパーの遺伝子はヒトの10倍もあり、再生にかかわる遺伝子を一つ一つ探し出すには時間がいくらあっても足りません。

そこで研究者はCRISPR-Cas9を用いた標的変異誘発を行うことにしました。

CRISPR-Cas9は、目星をつけた特定の遺伝子を狙い撃ちで書き換えたり、破壊することができる優れた技術です。

研究者は再生に関わる遺伝子をあらかじめ破壊候補としてリストアップしておくことで、ランダムな遺伝子を破壊していくよりも、はるかに効率的に遺伝子を調べられるようになりました。

このようにCRISPR-Cas9を用いた技術をさらに効率化したことによって、新たに再生にかかわる2つの遺伝子を発見することができたのです。

今後も、新たな再生遺伝子が発見されると期待されています。

人間にもウーパールーパーと同じ再生遺伝子がある?

人間の軟骨はウーパールーパーと同じ遺伝子で再生する/Credit:depositphotos

一方、近年行われた他の研究では、ウーパールーパーと人間が同じ遺伝子を使って組織の再生を行っていたことが発表されています。

共通する遺伝子はmiRNAといって、人間では関節にある軟骨組織において働いている遺伝子です。

人間の関節部の軟骨は、以前から他の組織よりも高い再生力があると知られていましたが、研究によって、その再生力がウーパールーパーと同質のものである可能性が出てきました。

人間では手足の再生には使われなくなったmiRNAですが、進化の過程で失われることなく、すり減った軟骨組織を素早く再生させる因子として残っていたのです。

もしmiRNA以外にもウーパールーパーと共通する再生機構が人間に眠っているならば、ちょっとした刺激で人間の再生力を活性化できる可能性もあります。

研究者たちは、ウーパールーパーの再生の仕組みを探ることで、さらなる人間の隠された再生能力を掘り起こせるのではないかと考えています。

もし医療への応用が可能になれば、四肢を初め、あらゆる臓器が再生可能になる可能性もあるでしょう。

ただし、脳の再生には少しばかり注意が必要です。

病気や怪我で一部の脳を失ったヒトに「脳の再生」を行えたとしても、記憶や人格まで戻ることはないからです。

無闇に脳を再生した結果、別人が起き上がってくる…といったこともあり得るかもしれません。

重度の神経損傷でもポリマーとタンパク質で治療できる技術が開発される

reference: phys / written by ナゾロジー編集部
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