ブラックホールをもっと鮮明に撮影することはできるの?

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Credit: George Wong (UIUC) and Michael Johnson (CfA)
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  • ブラックホールの離れた位置で曲がった光は、ぼんやりした画像の原因
  • 近傍の光はブラックホールを周回していて、その分シャープな画像を作り出せる
  • 新たな研究は、このシャープな下部構造のリングを予測する計算方法を公開した

2019年4月にブラックホールを撮影した画像が公開され大きな話題を呼びましたが、画像はなんだかもやっとした巨大な輝くリングでした。

これはブラックホールから離れた場所で重力に曲げられた光が含まれるため、大きく広がったぼやけた姿に見えるのです。

ブラックホール画像は、そんな遠方で曲がった光と近傍に捕まってブラックホールを周回した光による入れ子構造のリングで構成されています

天文学者たちはここから、ブラックホールに近い場所を周回した光だけを取り出して、よりシャープで鮮明なリングを捉え、ブラックホールの質量や自転に関する詳細な情報を手に入れようとしています。

今回の研究は、そんなブラックホールをもっと鮮明に見るための方法を提案するものです。

この研究は、ハーバード・スミソニアン天体物理学センター(CfA)の研究者Michael D. Johnson氏を筆頭とする研究チームより発表され、論文は査読付きオープンアクセス科学雑誌『Science Advances』に3月18日付で掲載されています。

Universal interferometric signatures of a black hole’s photon ring
https://advances.sciencemag.org/content/6/12/eaaz1310

ブラックホールの撮影方法

Credit: Nicolle R. Fuller/NSF

ブラックホールはよく知られているように、光さえ吸い込んでしまう強力な重力源です。そのため、その姿を直接見ることはできません。

ブラックホールの周りには吸い寄せられた物質(塵やガス)が激しく回転する降着円盤があり、それは輝くリングを作り出しています。

リングが輝く一方、ブラックホールに触れた光は失われてしまうため、私たちは光の中にできた影を見ることでその姿を知ることができます

ブラックホールはその強い重力によって周辺から届く光を曲げたり、捕まえたりしています。以前撮影されたブラックホール画像はそうした光を撮影しているのです。

このフォトンリングはブラックホールの指紋と呼べるもので、その質量や形、回転(スピン)についての情報を保持しています

2019年4月に公開された銀河M87中心の巨大ブラックホールシャドウの撮影画像。/Credit: EHT Collaboration

撮影に成功したブラックホールのフォトンリングは、なんだかもやっとしています。

これはもっとはっきりとできないのでしょうか?

よりシャープで鮮明なブラックホール

ブラックホールの光の輪は、ただ曲げられて地球に届いたブラックホールから離れた光子と、非常にブラックホール近傍にあって何度も周回してから届いた光子が重なり合ったものです。

ブラックホール近傍で周回した光は、それだけはっきりとしたシャープなリングを作ります。

Credit: Center for Astrophysics | Harvard & Smithsonian

上は離れた位置で曲がった光をイメージした動画。広く拡散するのが、ぼんやりしたリングの原因です。

Credit: Center for Astrophysics | Harvard & Smithsonian

一方、ブラックホールの非常に近くに捕らわれた光は、その周りを周回してよりシャープなはっきりしたリングを映します

画像のnは光子の周回数(厳密にはn/2周になる)を表しています。

以前に得られた画像のリングは、こうした複数の光の集積だったのです。もし、ブラックホールをより多く周回した光だけを取り出せれば、もっと鮮明でシャープなブラックホールのフォトンリングが得られるかもしれません。

そこからは、より正確なブラックホールの質量やスピン、形に関する情報が得られるはずです。

今回の研究はそうした、下部構造のリングを取り出す計算方法を提案しています。

Credit: George Wong (UIUC) and Michael Johnson (CfA)

ただ、より多くブラックホールを周回した光は非常に弱くなり、ほとんど見ることができない状態になります。

しかし、今回の研究では、干渉計と呼ばれるタイプの望遠鏡を使うと、この多く周回した光ははっきりした明確な信号として取り出すことができると説明しています。

この観測を実現させるには、非常に離れた2つの望遠鏡を使うことが有効です。具体的にはブラックホール撮影を成功させたイベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)に宇宙望遠鏡を1つ追加するだけで十分です。

研究者はそのように語っています。

これまでは、理論家が抽象的なイメージの中で語ってきただけのブラックホールが、ついに実験科学になって、明確にデータ収集できる時代に突入しています。

新しい手法は、いずれもっと鮮明なブラックホールの姿を私たちに提供してくれるかもしれません。

40年前の手書きブラックホール予想図が、NASA最新のシミュレーション映像と見事に一致

reference: CfA,phys,国立天文台 / written by KAIN
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