実は「指には筋肉がない」ってホント? 

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指の先にはほとんど筋肉がなく、手首と手の平から伸びる腱によって動かされている/Credit:Rauber-Kopsch(解剖学)
point
  • 指には筋肉がほとんどない
  • 進化的にみても、初めて生物が指を持った頃から指に筋肉はなかった
  • 指に筋肉がないのは、指を細く保つためだった

ピアニストやロッククライマーにはよく知られている事実ですが、実は指は、指の筋肉で動いているのではありません。

指を動かす力のほとんどは、手の平と手首付近の筋肉によって作られているのです。

確認するには簡単な実験をするだけです。

片方の腕をリラックスさせダラリと下に伸ばした状態で、反対の手で手首を握る…と、指が曲がりませんか?

これは、指の動きを制御する筋肉と腱が手首にあることを意味する、証拠の一つです。

またピアノやバイオリン、文章のタイピングなど指を使い過ぎた時に起こる腱鞘炎も、酷使された「指そのもの」に現れることは珍しく、手首以降の腕に現れます。

しかし、どうして指には筋肉がないのでしょうか?

指は太いより細いほうが役に立つから

指を酷使するピアニストでも指が肥大化しないのは、指に筋肉がないから/Credit:depositphotos

現在、理由として考えられている仮説は「指は細いほうが役に立つから」です。

指は人体の中で最も使われる部位の一つであり、指に筋肉があると、ちょっとした酷使でアッという間に肥大化してしまいます。

そうなると、細かい作業が行えなくなってしまいます。

人間のように指で複雑な動作を行える動物は、指そのものを太くして強化するより、細い指でできる繊細で細かい動きのほうに、価値があったのです。

進化的にも、最初から指に筋肉はなかった

Credit: Cloutier et al., Nature, 2020.Richard Cloutier and John Long

進化論的には、指や手は、私たちの祖先が陸上に進出するときに獲得されとされます。

上の図ははじめて指を獲得したとされている「E.watsoni」の骨格を、人間の手の骨格と比べたものにないます。

図からわかるように、私たちの指は、元々はエラを支える筋であり、最初から筋肉は無かったのです。

陸上に上がった後も、特に必要のない限り指の制御は、元エラの付け根に相当する手首の筋肉に任されることになります。

進化が続いて、強いグリップを必要とする樹上生活をするサルになっても、強く握る力は、指そのものにもたせるよりも、太い手首や腕に任せる方が有利でした。

さらに進化が進んで、石器を扱うようになると、今度は指に強さではなく繊細な動きが求められるようになりました。

そのため、指はますます筋肉をつけるわけにはいかなくなってしまったのです。

高度なロボットハンドも同じ

Credit:国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)

近年、人間の指や手を模倣するロボットハンドの開発が加速しています。

ですが、それら高度なロボットハンドの指の動力モーターも、指そのものにはあるものは珍しいのです。

関節の一つ一つにモーターを設置するより、各指に頑丈な腱を構築して、根元部分で一括操作するほうが効率的だからです。

人でも動物でもロボットでも、複雑な部分こそ、単純で一元的な仕組みで機能させる必要があるのかもしれませんね。

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reference: wikipedia / written by
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