5月末に「肉眼で見える彗星」が出現するかもしれない

space 2020/03/24
Credit:technologyandus

何年もの間、天文学者たちは肉眼で観測できる「彗星」の接近を待っていました。

2019年12月28日に発見されたアトラス彗星(C/2019 Y4)は、最近の観測により、ますます明るくなっていることが判明しています。

過度な期待はできませんが、もしかすると、アトラス彗星を地球から肉眼で観測できる日が近づいているかもしれません。

米国ニューヨークのヘイデンプラネタリウムのインストラクターである気象学者ジョー・ラオ氏は、アトラス彗星に関する報告を「livescience」誌でまとめています。

Newfound Comet ATLAS is getting really bright, really fast
https://www.livescience.com/comet-atlas-may-be-brightenting.html

彗星の成り立ちと観測条件

1997年3月に撮影されたヘール・ボップ彗星/Credit:Philipp Salzgeber

彗星は、塵を含んだ氷の塊からなる「核」で成り立っています。

それらの「核」は一定の軌道にそって宇宙を移動しており、太陽に近づくにつれて明るさを増し、私たちに「彗星」として認識されるようになります。

核は氷と塵の塊なので、太陽に近づくと太陽から放射される熱によってその表面が蒸発し始めます。これにより発生したガスや塵が核の周りを球状に覆うようになります。

さらに、太陽からの放射圧と太陽風によって、太陽の反対側へと「尾」が形成されるようになります。この状態が私たちがよく知る「彗星」です。

「彗星」は見た目こそ「流星」と似ていますが、「流星」と違って地球の大気によって一瞬で燃え尽きるものではありません。

もっと遠くに存在するものであり、観測可能になれば、地球上からは尾を引いたまま空に留まっているように見えます。この光景は滅多に見ることができません。

神秘的な彗星を肉眼で見るためには、いくつかの条件が重なる必要があります。

彗星の核が大きく、太陽との距離が近く、地球との距離も近くなければいけないのです。

現在観測されているアトラス彗星は、これらの条件を満たす「かもしれない」ため、天文学者たちはこの彗星の動向に期待の目を向けています。

もしこの期待が叶うなら、1997年のヘールボップ彗星以来の肉眼観測になるでしょう。

アトラス彗星はますます明るくなっている

ATLAS/Credit:technologyandus

アトラス彗星は、2019年12月28日にハワイに拠点を置くロボット天文学調査システム(ATLAS:Asteroid Terrestrial-impact Last Alert System)によって発見された彗星です。

発見当時のアトラス彗星は、おおぐま座の近くにあり、20等級に近い微かな光を放っていました。

これは、望遠鏡によってのみ観測可能な明かりであり、肉眼観測可能な星よりも約39万8000倍も暗いことになります。太陽からも4億3900万kmも離れていまいた。

しかし、アトラス彗星はこの時以来、太陽に急激に近づき、前例のないほどの速度で明るさを増しています。

そして、3月17日には、既に8等級ほどの明るさにまで発展しました。これは予想されていた明るさよりも600倍以上のものです。

アトラス彗星はこのまま太陽に近づいていき、5月中旬には、北極星であるポラリスと同等の2等級にまで明るくなるかもしれません。

さらに、5月末には太陽との距離がわずか3780万kmにまで近づきます。

この時には1等級よりもさらに明るい「マイナス5等級」になると予想している天文学者もいるほどです。

加えて、この時の地球とアトラス彗星との距離も非常に近いので、肉眼観測のための条件がそろっていることになります。

途中で崩壊する可能性も

もちろん、期待が必ず叶うとは限りません。アトラス彗星は、地球に近づく前に崩壊してしまう可能性があるからです。

アトラス彗星が急激に明るくなっているのは、太陽の熱によって核が急激に溶けてガスを放出しているからです。

ですから、核が小さい場合は、「ガスが不足して」私たちが肉眼で観測するまえに崩壊してしまうでしょう。

1995年に分裂を始めたシュワスマン・ワハマン第三彗星/Credit:Wikipedia

この先、アトラス彗星はどうなるのでしょうか?

何百もの彗星を観測してきた天文学者であるジョン・ボルトル氏によると、アトラス彗星は途中で崩壊してしまう可能性があるようです。

アトラス彗星は一見大きく見えますが、ぼんやりとしていて鮮明ではありません。

対照的に、これまでに地球に近づいてきた「肉眼で見える彗星」は、一見小さく見えるものの、かなり鮮明な外見をしていました。

ボルトル氏の観測では、アトラス彗星は「肉眼で見える」条件から外れているのです。

もちろん、現在の観測では、アトラス彗星が今後を誰も明言することはできません。

ボルトル氏の予測のように「私たちの期待に応えない」かもしれませんし、逆に、稀に見る輝きを見せる「大彗星」となるかもしれません。

今は、ただ待つしかないでしょう。

しかし、多くの天文学者は、今の悲惨な世界の状況の中で、人々の思いをポジティブにさせてくれるアトラス彗星の発展を心から「期待」しているようです。

point
  • アトラス彗星はますます明るくなってきており、肉眼で観測できるようになるかもしれない
  • 5月末には太陽に最も近づき、北極星以上の明るさに到達するかもしれない
reference: livescience / written by ナゾロジー編集部
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