ネクロプラネトロジーによるシミュレーション
未だに、白色矮星と周囲の惑星に関するたくさんの謎が残っています。
例えば、白色矮星に至る過程で、一連の激しい熱核爆発が起こりますが、通常、その爆発によって周囲の惑星は崩壊してしまうはずです。
しかし、ある惑星はなぜかその過程を生き残り、白色矮星の周囲を周回しています。
研究者たちはこの謎を解明するために、実際に「死んだ天体」である「WD 1145+017」の振る舞いを研究しました。
このように、天文学の中でも、特に「死んだ天体」について研究する分野は、近年、新しく「死の惑星学(ネクロプラネトロジー:necroplanetology)」と呼ばれるようになりました。
そして、謎を解明するために研究者たちが取った方法が、「WD 1145+017シミュレーション」です。
これは、観測した情報から、仮想現実にWD 1145+017をつくりだし、白色矮星に至る過程をシミュレーションするというものです。
更に、シミュレーション内では、コアとマントルの大きさ、マントルの組成、地殻の有無などが調整された36種類の疑似天体も作成されました。
そして、これらを「WD 1145+017」のような恒星の周りを周回するように設定し、そのプロセスを観測したのです。
シミュレーションの結果、現在の「WD 1145+017」で観測されているものを生成する可能性が高いのは、「小さなコアと低密度のマントルを持っている天体」だと判明しました。
この天体は比較的質量が小さく、しばらくの間は構造を維持でき、マントルは破壊されてしまうほどの密度になっています。
これらの特徴は、実際に観測できるWD 1145+017と周囲の状態と一致しています。
ネクロプラネトロジーによるシミュレーションによって、どんな惑星が恒星の熱核爆発を生き残るか判明したのです。
これによって、現在、WD 1145+017周辺にある惑星がどのような星だったかを知ることができます。
また、今回のシミュレーションで明らかになった点は、他の神秘的な星の謎を解く手がかりともなります。
今後、さらなるネクロプラネトロジーによるシミュレーションによって、生と死の影響が混在した現在の宇宙の仕組みが解明されていくでしょう。