日本製のBCGワクチンが新型コロナウイルスに対する免疫になっていた可能性

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BCGワクチンを接種していると免疫遺伝子が訓練され、免疫遺伝子(IL-1β)が黄熱菌(菌と名がついているがウイルス)に対して素早く対応できる。新型コロナウイルスに対しても、同じような仕組みが働いていると考えられる/Credit:Cell Host Microbe
point
  • BCGワクチンの接種は新型コロナウイルスに免疫を与えるかもしれない
  • 原種に近い菌から作られた日本のBCGは特に強い免疫になる
【編集注 2020.05.15 19:20】
この研究には疑義を呈する論文がいくつか提出されています。詳しくはこちら

4月4日、佐藤潤氏というブロガーが運営するブログにて、BCG(結核菌ワクチン)を接種している国では、新型コロナウイルスの死亡率が低い傾向にあることが示されました。

そこで今回、日本の研究者が本格的な統計分析を行ったところ、特定のBCG種は新型コロナウイルスの死亡率を有意に下げている可能性が示唆されました。

欧米で爆発的な感染が起きている一方で、日本での感染速度が比較的穏やかな原因が、国民が接種しているBCGの違いによる可能性があるとのこと。

さらに研究では、子供が新型コロナウイルスに罹りにくい理由が、BCGの有効期限(10~15年)の影響を受けている可能性も指摘されています。

しかし、どうして結核菌に対するワクチン「BCG」が、新型コロナウイルスの感染を防いだのでしょうか?

研究結果は藤田医科大学の宮川剛氏らによってまとめられ、4月6日にエール大学が運営する論文のプレプリントサーバー「medRxiv」にて先行して配信されました。

Association of BCG vaccination policy with prevalence and mortality of COVID-19
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.03.30.20048165v1

BCGを接種している国では死亡率が低い

縦軸が死亡率。左がBCGの接種を現在も行っている国。真ん中がかつてはBCG接種を行っていたが現在はやめている国。右はBCG接種を全く行っていない国。BCGの接種を行っている国では、死亡率が有意に低下している/Credit:medrxiv

ブロガーによるBCGと新型コロナウイルスによる死亡率の相関性にかかわる報告は、非常に素晴らしい発見でした。

しかし医療体制が異なる国を単純に比較することはできません。

特に平均寿命が短い国では、基本的な医療水準も低いと推測され、そのような場合、死亡率はBCGではなく、貧しさや医療水準に依存する可能性があるからです。

また季節性インフルエンザをはじめ、ウイルスの広がりは、気温の影響を受けることが知られています。

そこで宮川氏は統計的な手法を用いて、平均寿命と気温の要因の影響度を測定したうえで再度、BCGと新型コロナウイルスによる死亡率の相関性を比較しました。

結果、健康や気候の要因を差し引いても、BCGの接種は、新型コロナウイルスによる死亡率を大きく下げることが判明しました。

感染が爆発的に増加している欧米では、日本とは異なりBCGの接種がかなり少ないことが知られています。

日本株から作られたBCGは効果が高い

100万人あたりの感染者数を多い順に上から並べた。順位がしたのほうの感染率が低い国では、原種に近い菌に由来するBCGが使われていることを示す緑と青のセルが多い/Credit:Tsuyoshi [email protected]

また宮川氏による追加データにより、接種しているBCGの種類も重要であることがわかりました。

BCGには元となる結核菌が各国に配布された時期により、原種に近い菌(前期分与株型)と、そうでない後期分与株型の2つに大きくわけられます(配布元は同じパスツール研究所だが配られた時期が違う)。

今回、新型コロナウイルスに特に効果があるとされたBCGは、原種に近い菌(前期分与株)を元に作られたものでした。

原種に近い菌から作ったBCGを用としている国としては日本、タイ、台湾、ロシアなどが知られています。

タイや台湾で使われているBCGは、日本株と呼ばれる日本が樹立した菌に由来するものが使われています。

これら原種に近い菌からBCGを作っている国では、感染の増加は比較的穏やかです。

BCGで新型コロナウイルスに免疫ができる理由

BCGワクチンを接種していると免疫遺伝子が訓練され、免疫遺伝子(IL-1β)黄熱菌(菌と名がついているがウイルス)に対して素早く対応できる。新型コロナウイルスに対しても、同じような仕組みが働いていると考えられる/Credit:Cell Host Microbe

研究では、BCGが新型コロナウイルスをどのように抑制するかについての言及もなされていました。

BCGの接種は免疫細胞にとって、一種の訓練に近い働きを行わせ、免疫応答を素早く行えるようにしていたとのこと。

具体的には、BCGの接種には免疫遺伝子の調節部位(プロモーター)を書き換える効果があり、免疫に広範な(非特異的な)応答能力を授けていたと考えられます。

近年行われた他の研究では、BCGの接種が黄熱菌(名前は菌だが実体はウイルス)に対する耐性を強化していることも示されています。

また、BCGの有効期限は10年から15年とされており、新型コロナウイルスが子供に感染しにくいと原因が、このBCGの特徴的な期限の長さにある可能性も示唆されました。

人類の持つあらゆる医薬品が試されている

Credit:depositphotos

現在、蔓延する新型コロナウイルスに対して、人類の持つあらゆる医薬品が試されています。

インフルエンザ、エイズ、エボラといった感染病の治療薬だけでなく、高血圧をはじめとした生活習慣病に使われる薬の試験的な投与もはじまっています。

また今回の研究により、結核菌のワクチンであるBCGが、新型コロナウイルスの予防にもなる可能性が指摘されました。

細菌である結核菌とウイルスである新型コロナウイルスは、全くといっていいほど違う存在であり、本来ならば有効な治療法は異なる筈です。

ですが、人間は細菌によって最適化された免疫応答を、ウイルスに対して使うことも可能であることがわかりました。

この画期的な新事実は、今後の感染症予防にとって、新たな戦術を提供すると考えられます。

「BCGは新型コロナウイルスに効果なし」とする研究結果が発表される

reference: medrxiv / written by katsu
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