質量が異なるブラックホールの衝突が初めて確認される

space 2020/04/22
Credit: © N. Fischer, H. Pfeiffer, A. Buonanno (Max Planck Institute for Gravitational Physics), Simulating eXtreme Spacetimes project.
point
  • 質量が3倍近く異なるブラックホール連星が衝突した重力波が観測された
  • 現在の連星ブラックホール形成モデルでは、等質量であることが前提
  • 質量差のある連星ブラックホールがなぜ誕生するのかは、現在謎

1916年、今から100年近くも前にアインシュタインは天体の衝突で時空の波紋、重力波が発生することを予想していました。

そして現代になって、そうした重力波を検出して宇宙を観測することが可能になりました。

LIGOとVirgoという2つの重力波検出器によって、2015年か2017年の間に10個の連星ブラックホールの衝突が観測されました。

そして2019年には更に観測精度の上がった重力は検出によって、まるで音楽の倍音のような異なる調和した周波数の重力波が検出されたのです。

これは、分析によると、太陽質量の8倍と30倍のブラックホールが衝突して発生した時空のさざ波なのだといいます

連星ブラックホールはいくつも見つかっていますが、それらはいずれも等質量のもので、連星ブラックホールの形成モデルについても、現在は等質量ブラックホールであることが前提になっています。

質量が大きく異る連星ブラックホールがなぜ生まれるのか、現在のところ明確なメカニズムはわかっていません

この発見は、連星ブラックホールが形成される原理の理解に重要なものになると、天文学者たちも興奮しているようです。

連星ブラックホールが奏でる時空のゆらぎ

Credit: N. Fischer, H. Pfeiffer, A. Buonanno (Max Planck Institute for Gravitational Physics), Simulating eXtreme Spacetimes (SXS) Collaboration.

2つのブラックホールが、互いに周りあっているとき、そこには重力の波紋が生じます。

そして2つのブラックホールが衝突することで、大きなゆらぎは地球まではっきりと届き、何億光年も離れた場所で2つのブラックホールの合体があったことを私たちは知ることができるのです。

これまで、こうした連星ブラックホールは10以上発見されてきました。

しかし、今回観測された重力の波紋は、異なる2つの周波数が調和した不思議なものだったといいます。

それはちょうど音楽で言う倍音のような波でした。

倍音は音の周波数を整数倍にしたとき、音が調和する現象を指します。ラの倍音は1オクターブ上がったラで、3倍音は2オクターブ上のミの音になります。そしてこれらの音は綺麗に調和します。

連星ブラックホールが作る重力波の周波数は、軌道を周回する時間に応じて作られます。

通常の連星ブラックホールは等質量になるので、1つの周波数の重力波が響いてきます。しかし、質量差のあるブラックホールが互いを回り合っている場合、異なる周波数が同時に振動したような状態になるのです。

まるで和音のような状態です。

中心で質量の異なるブラックホールが回り合っている。右下が中央の拡大。/Credit:Max-Planck-Institut für Gravitationsphysik (Albert-Einstein-Institut),GW190412: Binary Black Hole Merger

質量の異なる連星ブラックホールの謎

この2つのブラックホールは、太陽質量の30倍と8倍になると言います。およそ3倍近くサイズが異なります。

太陽質量の8倍というブラックホールは、一般的に重い恒星が超新星を起こした際に誕生するサイズのもので、珍しいものではありません。

しかし、太陽質量の30倍というブラックホールは中間質量ブラックホールに分類されるもので、現在宇宙に見られるような天体では、この重さのブラックホールを形成することはできません。

考えられる可能性としては、ビッグバン直後に生まれた初代星と呼ばれる種族3の星です。

ビッグバン直後はまだ宇宙に水素とヘリウムしかなく、炭素以降の重い金属元素が極めて少ない状態でした。金属が無いと星に磁場や電場が発生しないため、恒星風がとても弱い状態になります。

恒星風が無いと外層の物質が吹き飛ぶこともないため、現代の星よりも非常に重い星が誕生するのです。

このため、大きく質量の異なる2つのブラックホールがどのように連星を形成したかは、興味深い問題です。

現在考えられる原因の1つは、これがもともと3つや4つの連星系で、大きいブラックホールはそれらがすでに合体したものであるということです。

しかし、それを確定する証拠はまだ得られていません。

Credit: N. Fischer, H. Pfeiffer, A. Buonanno (Max Planck Institute for Gravitational Physics), Simulating eXtreme Spacetimes (SXS) Collaboration.

連星ブラックホールがどうやって形成されるかはまだ謎が多く、完全に理解はされていません。今回の発見は既存の宇宙物理学モデルでは説明できないもので、こうした問題に理解を深めるための重要な発見です。

未知の連星ブラックホールが和音のような重力波を放って、発見されるというのはなんともロマンがありますが、ロマンだけでは語れない多くの謎が宇宙にはまだまだ満ちているようです。

この研究は、LIGOとVirgoの科学者によるコラボレーションによるもので、調査結果はアメリカ物理学会のオンライン会議で発表されています。研究内容の掲載学術雑誌は現在未定ですが、論文はコーネル大学プレプリントサーバーarXivで公開されています。

GW190412: Observation of a Binary-Black-Hole Coalescence with Asymmetric Masses
https://arxiv.org/abs/2004.08342

一般相対性理論が「ブラックホールを周回する星の軌道」によって証明される

reference: sciencealert,phys,ligo/ written by KAIN

 

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