統合失調患者が生み出した独創的なOS

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Credit:Terry_A._Davis/wikipedia
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Windows、MacOS、iOS、Androidなどは誰でも聞いたことがあるでしょう。これらはOS(Operation System)と呼ばれており、アプリやデバイスを作動させるための基本となるソフトウェアです。

そのようなOSを1人で自作してしまった人がいます。それがテリー・A・デイビス氏です。

デイビス氏は統合失調症を患っており、様々な症状に苦しみながらも「TempleOS」を作り上げました。

統合失調症による苦しみ

デイビス氏は1969年に米国ウィスコンシン州で生まれました。

彼の父親は工場エンジニアだったので幼少期からコンピュータについて学ぶことができました。そして、その後順調に成長しプログラマ―となりました。

Credit:Terry_A._Davis/wikipedia
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しかしながら、1996年から定期的に躁病(そうびょう)症状を経験し始めたようです。当初、彼は双極性障害との診断を受けましたが、後に統合失調症と判明。

彼は「宇宙人と政府のエージェント」の妄想によって苦しんでおり、何度も精神病院に滞在することになりました。

また彼のコミュニケーション能力は統合失調症の影響を大きく受けており、物議を醸す表現を何度も用いていました。

ただし、コンピューター関連の話題については明快に話すことができたようです。

そして、デイビス氏がカトリック教徒として育ったことも関係していると考えられますが、彼は「神からの啓示を受けた」と述べ、新しいOSである「TempleOS」を作成し始めました。

デイビス氏の思想が統合失調症によるものなのか、本人の述べた「神」によるものなのかは分かりません。

しかし、彼の残したTempleOSは好評であり、彼のファンを生み出すことになりました。

神殿としての役割を持つ?「TempleOS」

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TempleOSは「HolyC」と呼ばれるプログラミング言語で作成、2013年にリリースされました。

このHolyCは、一般的なプログラミング言語である「C言語」および「C++」によってデイビス氏が開発した独自のC言語です。

また、640×480解像度、16色ディスプレイ、単一音声などのシステム機能を有しており、シンプルな出力が特徴的です。

TempleOSには複数のゲームが搭載されており、独自のゲームを遊ぶことができます。

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統合失調の影響を受けたであろう彼の思想はこのOSに反映されています。

もともと彼はこのOSを「神の神殿」として作成しており、OS使用者が神と交信することを意図していました。

そのためOSには聖書の比喩表現が多く含まれており、内蔵されたゲームにもランダムテキストによって「神からの信託」を作成するものがあります。

しかし、彼のファンのほとんどが実際にOSを使用して神に話しかけなかったことからも、「彼の意図」は評価されなかったのでしょう。

また、TempleOSが完成した後、デイビス氏はOSを用いて神と話すことに時間を費やし、その光景をビデオブログとして投稿し続けました。

彼の発言には人種差別や同性愛嫌悪の表現が多く含まれており、その過激さゆえに、いくつかのウェブサイトでは彼のアクセスが禁止されるようになったのです。

単独OS作成は、男の献身と情熱の証し

このようなデイビス氏のマイナス評価にもかかわらず、TempleOSはおおむね好評でした。それは多くの人が彼の情熱を認めたからに他なりません。

デイビス氏はこのOSを開発するために10万行を超えるコードをたった1人で書きあげました。

そのため彼のファンはデイビス氏を「プログラミングの伝説」と称し、また別のファンはTempleOSを1人で作り上げることを「超高層ビルを1人で建てる」ことと比較しています。

TechRepublicにレビューを掲載したジェームズ・サンダース氏は、「TempleOSは、技術力を発揮したひとりの男の献身と情熱の証です。それ以上のものは必要ありません」とさえ述べています。

またデイビス氏と対談したエンジニアによると、「デイビス氏の病気が無ければ、彼はスティーブ・ジョブスだった」とのこと。

ホームレス時代のデイビス氏/Credit:Terry_A._Davis/wikipedia

OS作成に関しては高い評価を得ていたデイビス氏ですが、創造性が制限されることを理由に治療薬の服用をやめ、統合失調の症状に苦しみ続けました。

最終的にはホームレス生活を送ることになり、2018年8月の夜、電車に轢かれてしまい亡くなったのです。

デイビス氏は、統合失調症に苦しみながらも負けずに情熱を注ぎ続けた人として、今でも多くの人に記憶されています。

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