
- 人間の脳には移動に喜びを感じる特別な幸福回路がある
- 幸福回路は記憶を司る海馬と快楽を支配する線条体の間に配線されていた
- 新しい移動を行うことで誰でも幸福回路を強化できる
「散歩に出歩いて、ちょっと新しい道を進んでみたらすごく楽しかった」――
新たに行われた研究では、そんな幸福体験を科学的に裏打ちするような結果が得られました。
研究では、人間の脳は「多様性や新規性のある移動」を検知すると報酬系を作動させ、喜びや幸福感を生み出すことが分かりました。
これまでにも、マウスなどの動物によって移動が脳の報酬系を活性化させることは知られていましたが、人間で同じような、「幸福発生回路」がみつかったのは初めてです。
では、最大の幸福感をうみだすにはどのような移動が最適なのでしょうか?
多様で新規性のある移動は幸福をもたらす

調査では132人のボランティアが選ばれ、3カ月間、彼らの移動経路をGPSで追跡すると同時に、ランダムなタイミングで幸福度を答えるアンケートに回答してもらいました。
その結果、移動距離が長い人間ほど、日々の生活でより高い幸福度を感じている傾向があることがわかりました。
また同じ移動距離でも通勤や通学とは違い、多様性や新規性がある移動ほど、感じている幸福感がより高くなっていたようです。
同じような移動と快楽の相関関係は、先行するマウスなどを用いた研究により明らかになっていますが、人間で同じような結果が得られたのは今回が初めてとなります。
研究者たちは「人間には明らかに移動を快楽と感じるように頭が配線されている」と述べています。
また移動から快楽を得られる仕組みは、人類の歴史の大部分を占める非定住の狩猟採集生活を送るにあたり、モチベーションの増加に寄与していると考えられます。