
- 74,000年前のドバ山の破局噴火は人類を1000家族まで減らして絶滅危惧種にした
- しかし南アフリカのピナクルポイントと呼ばれる遺跡群に住んでいた人類はこの時期、むしろ繁栄していた
- 調査の結果、ピナクルポイントにいた動物は季節移動をやめるほど恵まれた楽園だったと判明した
200万年前に最初のヒト属ホモ・ハビリスがアフリカで誕生してから、人類はその数を順調に増やしてきました。
しかし実は、一度その数を激減させているのです。
7万4千年前にインドネシアで起きた巨大噴火(ドバカタストロフ)は地球を寒冷化させ、各地の人類のほとんどが死滅。生き残った人類は1000家庭にも満たないといわれています。
ところが、最近の研究により、南アフリカの「ピナクルポイント」と呼ばれる遺跡群に住んでいた人類はこの時期、むしろ豊かな生活を送っていたことがわかっています。
そこで今回、アメリカの研究者たちは、ピナクルポイントがどのような場所だったのか調べるために、周辺に生息していた動物の歯の化石を調べました。
その結果、ピナクルポイントはまさに渡り鳥さえ移動をためらうような「エデンの園」とも言うべき恵まれた環境であることがわかりました。
エデンの園では動物は季節性の移動をやめていた

先行研究では、南アフリカのピナクルポイントはドバカタストロフが起きる中で、人類に対して避難所の役割を果たしたことが知られています。
そこで研究者たちは、なぜピナクルポイントが人類にとって特別な場所になったのかを、遺跡群から発見された動物の骨を手掛かりに解明しようと試みました。
謎の解明の鍵となったのは、動物たちの食べていた水や植物に含まれる炭素と酸素です。
現在のピナクルポイントに生きる動物(ヌー、ハーテビースト、スプリングボックなどの有蹄類)たちは、雨季には東海岸で一般的な植物の草(C3植物)を食べ、乾季には西海岸でサボテンなど乾燥に強い植物(C4植物)を食べて生きています。
一般的な植物(C3植物)と乾燥に強い植物(C4植物)は合成される炭素や酸素の種類が僅かに異なっており、動物の歯に残った元素の違いを調べることで、どちらの植物を食べていたかがわかります。
研究者が調べた結果、ピナクルポイントの遺跡群から発見された動物は一般的な植物(C3植物)だけを食べていたことがわかりました。

このことは、かつてピナクルポイントにいた動物たちは季節性の移動を行わず、ずっと同じ場所の植物を食べ続けていたことを意味します。
研究論文の第一著者であるホジキンス氏は「かつてのピナクルポイントは非常に恵まれた地であり、本来季節性の移動を行う動物を同じ場所にずっと引き留めておくのに十分な食料資源を持っていた」と述べています。
これは当時、狩猟採集生活を行っていた人類にとってもピナクルポイント周辺が「エデンの園」であったことを意味します。
近くの草原に脚を運べば、いつでも多くの獲物に出会えたからです。
ドバカタストロフによって外部環境が過酷になる一方で、ピナクルポイント周辺では人類にとっての楽園が築かれていたのです。