羽に毒を持つ鳥は、好物の虫から「最強の毒」を吸収していた!

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人工的に飼育されたズグロモリモズは毒を持たないために手で触れる/Credit:wikipedia
point
  • 毒鳥ズグロモリモズは羽に神経毒をもっている
  • しかし人工飼育されたズグロモリモズには毒がなかった
  • 野生のズグロモリモズの胃を調べたら毒を持つ甲虫がみつかった
  • ズグロモリモズの毒はエサに由来するものだった

毒のある動物としてまず思いつくのは、ヘビやカエル、そしてフグなどがあげられます。

一方で、に毒がある印象はあまりないでしょう。

しかし1990年に博物館に飾るため、ズグロモリモズの羽を触っていた科学者に、突然体のシビレや皮膚の火傷症状が現れました。

なんと後の調査で、ズグロモリモズの羽には重量比で最強の神経毒とされる、バトラコトキシン系列の化合物が含まれていることが判明しました。

バトラコトキシンは1mgで、ネズミなら1万匹、人間なら20人を殺す毒性がある猛毒です。

しかしズグロモリモズはでありながら、どうやって、ここまで強力な毒を持つようになったのでしょうか?

実は、エサとしてズグロモリモズが好んで食べる「エサ」に秘密があったようです。

最強の神経毒はエサから得ていた

ズグロモリモズの胃袋から多くみつかった猛毒をもつ甲虫/Credit:PNAS

最強の神経毒を有する毒鳥として、知られるようになったズグロモリモズですが、すぐに奇妙な事実が判明します。

人工的な飼育環境では、ズグロモリモズが全く毒を生産しないことがわかったのです。

そこで研究者は野生のズグロモリモズを捕らえ、胃袋の中身を調べました。

すると胃の中には、バトラコトキシンを生産することが知られている、特殊な甲虫類(Choresine)の残骸がみつかったのです。

ズグロモリモズの毒は、エサから吸収したものだったようです。

食べられないように毒を進化させた昆虫にとっては、自分の捕食者の防御手段を提供したことになるという、皮肉な結果となりました。

身を守る毒も、相手の耐性獲得によって逆効果となりえるようです。

なお、カブトムシが作る毒の原材料は、エサとなる植物が生産する植物ステロール(コレステロール、スチグマステロール、シトステロール、エルゴステロールなど)に由来すると推定されています。

同じ森にはズグロモリモズの外見を真似する鳥がいる

中国の『韓非子』『本草網目』などには、伝説の毒鳥「鴆(ちん)」についての記述がある/Credit:wikipedia

しかし疑問は残ります。

ズグロモリモズはなぜ猛毒のエサを食べても平気なのでしょうか?

バトラコトキシンは特にズグロモリモズの羽と皮膚に濃く存在するものの、骨格筋や心臓といった組織にも存在が確認されています。

通常のであれば、明らかな異常が発生するはずです。

その答えは、遺伝子にありました。

近年の遺伝的分析により、ズグロモリモズは自身の遺伝子2か所とミトコンドリア遺伝子3カ所を変化させることで、毒に対する耐性を得ていたことが示唆されたのです

ですが毒を用いた圧倒的に有利な生存戦略は、すぐに他の動物に利用されてしまいます。

ズグロモリモズが生息する森に、まったく別種の鳥でいながら、ズグロモリモズにソックリな外見と色合いをした鳥があらわれはじめたからです。

このコピー鳥は、毒のあるズグロモリモズに外見を似せることで、自分も毒があると見せかけ、捕食から免れることに成功していました。

こうなっては、捕食者に対する学習効果はダダ下がりになり、毒耐性の元祖であるズグロモリモズにとっては損ばかりとなります。

しかし本物の毒だけが持つ利点もあります。

ズグロモリモズの羽に含まれる強力な神経毒は、ノミやダニといった羽に寄生する虫に対して効果があり、ズグロモリモズは他の鳥とは違って寄生虫からの被害を受けにくいのです。

ズグロモリモズがコピー戦略に負けて毒を失わないのも、こうした地味ながら確実な差となる効果があるからかもしれません。

やはり偽物は本物には敵わないということでしょうか。

この研究はアメリカの科学学術雑誌「scinence」に掲載されました。

Homobatrachotoxin in the genus Pitohui: chemical defense in birds?
https://science.sciencemag.org/content/258/5083/799

渡り鳥の鳴き声が20年間で変化していた!? 鳥もバズりを気にするのかも(北米)

【編集注 2020.07.30 17:00】
記事内容に一部誤りがあったため、修正して再送しております。
reference: australiangeographic / written by katsu
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