- 毒鳥ズグロモリモズは羽に神経毒をもっている
- しかし人工飼育されたズグロモリモズには毒がなかった
- 野生のズグロモリモズの胃を調べたら毒を持つ甲虫がみつかった
- ズグロモリモズの毒はエサに由来するものだった
毒のある動物としてまず思いつくのは、ヘビやカエル、そしてフグなどがあげられます。
一方で、鳥類に毒がある印象はあまりないでしょう。
しかし1990年に博物館に飾るため、ズグロモリモズの羽を触っていた科学者に、突然体のシビレや皮膚の火傷症状が現れました。
なんと後の調査で、ズグロモリモズの羽には重量比で最強の神経毒とされる、バトラコトキシン系列の化合物が含まれていることが判明しました。
バトラコトキシンは1mgで、ネズミなら1万匹、人間なら20人を殺す毒性がある猛毒です。
しかしズグロモリモズは鳥類でありながら、どうやって、ここまで強力な毒を持つようになったのでしょうか?
実は、エサとしてズグロモリモズが好んで食べる「エサ」に秘密があったようです。
最強の神経毒はエサから得ていた
最強の神経毒を有する毒鳥として、知られるようになったズグロモリモズですが、すぐに奇妙な事実が判明します。
人工的な飼育環境では、ズグロモリモズが全く毒を生産しないことがわかったのです。
そこで研究者は野生のズグロモリモズを捕らえ、胃袋の中身を調べました。
すると胃の中には、バトラコトキシンを生産することが知られている、特殊な甲虫類(Choresine)の残骸がみつかったのです。
ズグロモリモズの毒は、エサから吸収したものだったようです。
食べられないように毒を進化させた昆虫にとっては、自分の捕食者の防御手段を提供したことになるという、皮肉な結果となりました。
身を守る毒も、相手の耐性獲得によって逆効果となりえるようです。
なお、カブトムシが作る毒の原材料は、エサとなる植物が生産する植物ステロール(コレステロール、スチグマステロール、シトステロール、エルゴステロールなど)に由来すると推定されています。