イギリス南部にある「ストーンヘンジ」は、世界で最も有名な遺跡のひとつです。
しかし、材料となる巨石がどこから運ばれてきたのかについては、これまで大きな謎となっていました。実に4世紀もの間、専門家たちを悩ませ続け、いまだに答えは得られていません。
ところが今回、英・ブライトン大学の最新研究により、巨石の産出地がストーンヘンジから25キロ離れたウィルトシャーの「ウェストウッズ(West Woods)」と判明したのです。
一体、どのように割り出したのでしょうか。
巨石の産出地はストーンヘンジから25キロも離れていた
ストーンヘンジには、「サルセン石」という巨大な砂岩が使われています。
研究チームは、全高7〜9メートル、重量20〜30トンにもなるストーンヘンジのサルセン石をX線分析にかけました。その結果、石の大半は化学組成が同じであり、ある1ヶ所から採石された可能性が高いと予想されていました。
また、1958年にストーンヘンジから採取されていた筒状の巨石サンプルも調べました。これらの分析データをもとに、産出地の候補となるイングランド南部20ヶ所の砂岩と比較した結果、遺跡から25キロの地点にあるウェストウッズの砂岩と見事一致したのです。
具体的には、ストーンヘンジにある52個の巨石のうち、50個はウェストウッズ由来のものと思われたとのこと。
研究主任のデビッド・ナッシュ教授は「私たちは、巨石の産出地をピンポイントで特定できるとは考えていませんでした。20ヶ所の候補地から明らかに違う場所をはじくことを当初の目標にしていたのです」と話します。
ウェストウッズは、春先に鮮やかなブルーベルが咲き、ハイキングや犬の散歩場所として有名です。豊かな森林の中には、確かにストーンヘンジに使えそうなサルセン石が見られます。
しかし、トラックもない時代に(ストーンヘンジ建設年代は紀元前2500年頃)、25キロもの距離をどうやって運び切ったのかは不明です。
作業には、かなりの大人数を投入する必要があり、さらに各々が協調的かつ高度に組織化されていなければとても巨石は運べません。
巨石を運んだルートについて、ナッシュ教授は「ウェストウッズとストーンヘンジの間で、巨石のかけらなどが見つかれば、特定も不可能ではない」と述べています。
研究チームは今後、巨石の運搬ルートを探しつつ、ウェストウッズ内の採石場をより正確に割り出していく予定です。
研究の詳細は、7月29日付けで「Science Advances」に掲載されました。
https://advances.sciencemag.org/content/6/31/eabc0133
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