原因は寒冷化とペスト?
地球は温暖期と寒冷期を頻繁に繰り返しており、6〜7世紀頃までは「古代後期小氷期」という寒冷期に入っていました。この気候変動を背景に、東ローマ帝国は「ペストの大流行」に見舞われたのです。
541〜549年まで続いたペストにより、当時の東ローマ帝国の実に20%の人口が減少。それに加え、ユスティニアヌスの重税が災いし、帝国の社会経済は崩壊しました。
これを踏まえ、フークス氏は「帝国の人口減少と購買力の低下により、ネゲヴの農産物が買われなくなり、経済的に衰退したのではないか」と推測します。
ペストがネゲヴまで拡大していたかどうかは不明ですが、帝国の経済支援がない上に、小氷期のせいで農作物が不作に陥った可能性は高いでしょう。
ユスティニアヌス自身もペストに感染しましたが、後に回復しています。しかし、一度崩れた帝国の経済は回復しませんでした。ユスティニアヌスの後、東ローマ帝国は急激に縮小・弱体化し、9世紀になるまで長い衰退期に入ります。
フークス氏は「気候変動とペストがネゲヴの産業を崩壊させた直接的な原因とは断定できませんが、何らかの形で農民たちに打撃を与えたのは間違いない」と話します。
ネゲヴの悲劇は、単なる過去の出来事ではなく、新型コロナウイルスの感染拡大が続く現代にも言えることではないでしょうか。