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さよなら注射。皮膚を「押して」薬を投与する薬剤浸透法が開発される

2021.01.27 Wednesday

2020.08.08 Saturday

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Credit:Chin Shiuan Daniel Lio
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  • 注射の代わりに、皮膚に圧力をかけて薬剤を浸透させる方法が開発される
  • 圧力を加えることで、皮膚の表面下には微小な孔が形成される
  • 微小孔を通して薬剤が通常時の6倍浸透する
  • 圧力浸透法を利用するなら、痛み・傷なしでインスリンを投与できる

注射は薬剤投与の一般的な手法ですが、形状や痛み・傷から、患者には好まれないものです。特に1型糖尿病患者はインスリンを1日に数回投与しなければならず、注射は大きな負担となっています。

ところが最近、シンガポール南洋理工大学生物医学工学部ダニエル・チン・シアン・リオ博士らの研究チームは「皮膚に圧力を加えて」薬剤を浸透させる方法を生み出しました。

この方法を用いれば、注射器で皮膚を傷つけずに薬物を投与できます。

圧力を加えて微小孔をつくり、薬剤を浸透させる

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Credit:CNA

研究チームは最初、伝統的な中国医学の「推拿(トゥイナ)」に注目しました。

トゥイナはマッサージのような療法で、皮膚や筋肉組織を擦すったり圧力をかけたりした後、軟こうを塗ります。

この「圧力をかけた後に薬剤を塗布する」メリットを科学的に検討し調査した結果、磁石を用いた一時的な圧力が、皮膚の表面下に非常に小さな孔を形成すると判明。研究チームは、この孔を通して薬剤が浸透していくと考えました。

そこで、新しいデバイスが作られました。これは万力のような形状をしており、2つの磁石で皮膚をつまめるようになっています。

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Credit:Chin Shiuan Daniel Lio

つまむことで皮膚には圧力がかかり、皮膚の表面下には約3μmの微小孔が形成されます。

デバイスを取り外した後、薬剤を塗布することで、微小孔を通して薬剤を浸透させることが可能なのです。

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