神秘的な「青い炎の渦」の構造を解明!その正体は3つの異なる燃焼の結合だった

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Credit:Credit:J.D. Chung et al.,Sci. Adv. 2020; 6: eaba0827
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  • 2016年に海上の油汚染を取り除く研究から偶然発見された青いのリングの構造が明らかになった
  • これは3種類のが結合して生成されたもので、完全に燃料を燃焼させていて煤が出ない
  • 多くの課題が残っているが、青いのリングは化石燃料をクリーンなエネルギーとして利用する要になる

美しいモーリシャス諸島の海が、タンカー座礁による重油流出で汚染されている報道にショックを受けた人も多いでしょう。

こうした重油流出事故について、2016年に水上で油を燃やして除去する方法が研究されました。

この方法は残念ながら実用化はまだ難しいようですが、このとき研究チームは偶然にも新種のを発見したのです。

それは幻想的な青いのリングでした。

「Blue whirls(青い渦)」と表現されるこの火現象は、燃料を完全に燃焼させていて、まったく煤を出すことがない非常にクリーンなでした。

しかし、この「Blue whirls」が一体どういう構造のなのかは、ずっと謎に包まれていたのです。

今回の新たな研究は、数々の実験データからこの現象をシミュレーションすることに成功し、青いのリングの構造を世界で初めて明らかにすることに成功しました

この火現象を自在に操れるようになれば、重油流出のような環境汚染の除去や、有害物質を排出しない化石燃料の利用など、未来に向けたエネルギー問題の解決にも貢献できるかもしれません。

火災旋風と青い渦

2016年の研究では、海上に流出した原油汚染の除去方法について検討されていました。

ここで研究された方法は、流出した原油を1カ所に集めて水面に油の厚い層を作り、これを燃焼させて除去するというものでした。

しかし、この除去方法は非常に大量の煙(煤)を発生させてしまい、とても実用的とは言えませんでした

これを解決するためには、水上の油層を効率よく燃焼させ、周囲の大気や下にある海中へ有害物質を排出させないようにする必要があります。

そこで当時の研究チームが着目したのが、「火災旋風」と呼ばれるの竜巻でした。

これは都市部や山岳地で起きる大規模な火災のときに発生する危険な現象ですが、循環するの渦は燃料表面の加熱を大幅に増加させ、非常に効率の良い素早い燃焼が実現できます。

そこで研究者は水上に油の層を作った実験装置の中で火災旋風を起こし、環境汚染の少ないクリーンな燃焼が可能かどうかを検証したのです。

しかし、この研究は想定外の新種のを生み出してしまいます。それが青いの渦でした。

火災旋風が青いのリングに変化する様子。/Credit:Huahua Xiao et al.,PNAS(2016),DOI: 10.1073/pnas.1605860113

この青い渦は通常の燃焼でよく見かける黄色いから発展して発生します。

黄色いは、燃料を完全に燃焼するだけの十分な酸素がないとき形成され、煤の粒子を放出する不完全燃焼の状態です。

しかし、火災旋風が十分な燃料と酸素を巻き込んで完全燃焼したとき、煤をまったく出さないクリーンなに変化しました。そのとき現れたのがこの回転する青いのリングなのです。

火災旋風は恐ろしい災害だと長年考えられてきましたが、この現象を制御することができれば高効率で低排出の燃焼状態を生み出すことができるのです。

これは世界的な燃料消費による環境問題にも対応できる夢の燃焼なのです。

しかし、偶然見つかったこの新種のは、一体どういう構造になっているのか、中心の青いのリングは一体何なのか? 2016年の研究時点ではまったくの謎でした。

青いのリングの正体

その後、研究チームはこの青いのリングについて研究を続けてきました。そして十分に集めた数値データを元に、この現象を3次元数値シミュレーションで再現することに成功したのです。

中央が数値シミュレーション。左右が物理実験による青い渦。/Credit: Chung et al., Sci. Adv. 2020; 6: eaba0827

その結果、この青いのリングは3種類の異なる燃焼が組み合わさったキメラのようなものであることがわかりました。

青いリングの下側で逆円錐状に燃えているのは、濃厚な予混合火です。これは燃料と酸素が混合されて起こる燃焼です。

名前に「予」という文字が入っているのは、これがもともとはエンジンやガスバーナなどで、予め燃料(可燃性気体)と酸素を混合して点火した際、発生するだからです。

ガスバーナーやコンロの理想的なが青いのは、この予混合火のためです。

ここでは酸素より燃料のほうが過剰な状態になっています。

リングの上にあるのは拡散火です。これは燃料と酸素が分離して拡散しながら燃えている状態のです。

この拡散火の外側でうっすら燃えているのは、酸素割合が高い予混合火です。

青い渦の火構造。/Credit:Huahua Xiao et al.,Sci. Adv. 2020; 6: eaba0827

そして明るく輝く青いのリングは、この3種のがすべて結合したものでした。これは酸素と燃料が両方とも完全燃焼のために完璧な量で存在しており、燃料はすべて燃えて煤などの排出物を発生させません

クリーンな青い

Credit: Chung et al., Sci. Adv. 2020; 6: eaba0827

青いの構造や発生条件が解明されたとは言え、これはまだ実用段階には到達していません

煤を出さないクリーンでエコな完全燃料は、化石燃料に依存した世界で大量の有害物質の排出を抑える重要な技術になる可能性を持っていますが、そのためには克服しなければならない多くの課題が存在します。

現在このは実験室の密閉された小さな装置の中でしか発生できていません。また火災旋風の竜巻を経由しなければ発生されることができません。

不完全燃焼の黄色いの火災旋風を経ずに、いきなりこの青い渦を発生させることは可能なのか? 形成されるサイズを制御することはできるのか? その場合大きな青い渦が生まれるのか、小さな渦が大量に生まれるのか?

装置のようか囲いがない状況でも作れるのか? 複数の青い渦を同時に作って干渉せずに維持させることはできるのか?

問題は山積みのようです。

しかし、もし完全にこのを理解して制御できるようになれば、モーリシャス沖のような原油汚染を一切煙も出さずに燃やして除去したり、煙を出さない火力発電所も作り出せるようになるかもしれません。

 

この研究は、米国メリーランド大学のJoseph D. Chung氏を代表とした研究チームより発表され、論文は科学雑誌『Science Advances』に8月12日付けで掲載されています。

The structure of the blue whirl revealed
https://advances.sciencemag.org/content/6/33/eaba0827.full

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