超対称性理論が間違いである可能性が濃厚になった
超対称性理論が間違いである可能性が濃厚になった / Credit:Canva
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現代物理学を支えていた「超対称性理論」に崩壊の危機が迫る!CERNが検証 (2/3)

2021.01.27 Wednesday

2021.01.15 Friday

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超対称性とは何か?

超対称性理論を使えばダークマターの存在も説明できた
超対称性理論を使えばダークマターの存在も説明できた / Credit:九州大学

超対称性理論とは「物をつくる粒」と「力をつたえる粒」に、それぞれソックリな「裏の顔」が存在するとする理論です。

理論の名前となった超対称の部分も、表の顔に対して鏡合わせのような裏の顔が存在し「対称性」があることに由来します。

対象となった裏の顔の粒子たちは「物をつくる粒子」が「力をつたえる粒子」の属性にチェンジし、「力をつたえる粒子」も同様に「物をつくる粒子」になり、真逆の性質を持つようになっています。

しかし私たちの身の回りには、超対称性の粒子はみられません。

超対称性理論はこの点も説明しています。

宇宙がうまれた直後、非常に高エネルギーの状態では、表の顔である「物を作る粒」と「力をつたえる粒」とそれと超対称になる裏の「物を作る粒」と「力をつたえる粒」の全てが存在していました。

ですが時間が過ぎ宇宙が冷えてくると「対称性の破れ」と言われる現象が起き、裏の超対称性粒子は全て消えてしまった(反物質と話が似ているが超対称性粒子は反物質ではない)のです。

以上が、超対称性理論の基本になります。

なので超対称性理論が正しいかを調べるには、原理的には、宇宙がうまれた直後の高エネルギー状態(の速度で粒子がぶつかる世界)を再現し、実際に裏の超対称性粒子が生じるかを確かめるのが一番です。

問題は、超対称性理論が発表された当時、宇宙誕生直後の様子を再現する方法がなかったことです。

CERNが建設した大型衝突加速器の断面図
CERNが建設した大型衝突加速器の断面図 / Credit:CERN

そこで人類はCERN(セルン)と呼ばれる組織を作り、大型衝突加速器(LHC)を建設しました

大型衝突加速器は粒子を光の速度まで加速し、衝突させることで初期宇宙を再現します。

しかし、いくら装置内部で初期宇宙の様子を再現しても(光速付近で衝突を繰り返しても)、超対称性粒子(裏の顔)は現れませんでした。

出力を上げ、条件を工夫し、試行回数を重ねても、結果は「0」「ナシ」「ヌル」でした。

こうなると、結論は一つしかありません。

長年に渡り物理学の常識と考えられてきた超対称性理論が全て、あるいは少なくとも一部に、間違いがあったのです。

次ページこれからの物理学は超対称性理論ぬきで進めなければならない

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