現生のワニや鳥とソックリだった
今回、調査されたのは、1億3000万~9960万年前に存在した「プシッタコサウルス」の化石です。
プシッタコサウルスは、体長1~2メートルの小型の草食恐竜で、名前の由来である「オウムのようなくちばし(Psittacus=オウム)」が特徴にあげられます。
研究主任のジェイコブ・ヴィンザー氏は「ドイツのセンケンベルグ博物館に保管されていた化石を復元したところ、総排泄腔の保存状態がよく、色素や皮膚がはっきり残っていることがわかった」と話しています。
恐竜の総排泄腔は先行する研究があまりなく、ほとんど未知の領域でした。

調査の結果、内部のしくみまでは解明できませんでしたが、外観の再構築に成功しています。
とくに現生のワニや鳥類との類似が多く見られました。
例えば、穴の下の丸く膨らんだ部分(Dorsal lobe、下図参照)は、鳥のそれとよく似ています。
この部分は鳥のオスが繁殖期に精子を貯蔵する場所であり、プシッタコサウルスでも同様の機能があったかもしれません。

それから、穴の両側に位置する側唇(lateral lip)は、現生ワニのそれに近似していました。
ただワニの側唇が穴の左右で縦に並んでいるのに対し、プシッタコサウルスではV字型になっています(下図参照)。
このことから、お尻の穴がスリット状に開口していた可能性が浮上しました。
さらに、プシッタコサウルスの総排泄腔には、強い色素沈着が見つかっています。
お尻の穴の色を濃くすることで、交配相手にアピールしていたのかもしれません。

一方で、総排泄腔を保存しているプシッタコサウルスの化石はこの他にないため、外観以上のことはわかりません。
性別も総排泄腔の内部を見る必要があるため、この個体がオスなのかメスなのかは特定できないようです。
それでも、ワニや鳥類との類似性から、似たような機能をもっていた可能性が示唆されています。
研究チームは今後、恐竜の排泄や生殖のメカニズムを解明するべく、総排泄腔の調査を続けていく予定です。