ショウジョウバエが熱源を避ける方法が自動運転に利用できる可能性がある。
ショウジョウバエが熱源を避ける方法が自動運転に利用できる可能性がある。 / Credit: Gallio lab,Northwestern University
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完全自動運転の実現に、ハエの熱源感知能力が利用できる? (3/3)

2021.08.27 Friday

2021.04.14 Wednesday

前ページハエを元に進化させた自動運転シミュレーション

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ブライテンベルクビークルはハエの行動を再現できるのか?

もっとも単純な自律ロボットのモデル「ブライテンベルグビークル」の動画。
もっとも単純な自律ロボットのモデル「ブライテンベルグビークル」の動画。 / Credit:en.Wikipedia

「ブライテンベルグビークル」とは、『模型は心を持ちうるか』の著者として知られる脳神経科学者ヴァレンティノ・ブライテンベルグによって提案されたクルマのモデルです。

これは自律移動(自分で判断して行動する)ロボットの最も単純なタイプです。

ブライテンベルグは、センサーとモーターだけで構成された非常にシンプルなモデルが、昆虫などの行動を再現するもっとも近いものになるだろうと考えていました。

これはもっとも単純な自動運転のモデルと考えることもできます。

そこで、研究者たちは、コンピュータシミュレーションを使ってブライテンベルグビークルを作成し、どこまでショウジョウバエの行動を再現できるかを調べてみたのです。

このシミュレーションでは、一種の自然淘汰のようなシステムが採用されています。モデルのシミュレーションを行ったあと、もっとも成績の良かった車両を選んで、少しずつ変異させて、組み換えを行っていきました。

そして、研究はこの方法によって、シミュレーションの中で、500世代も自動車を進化させたのです。

すると、自動車の動作は、最終的に熱源を避けるショウジョウバエと同じ動作を行えるようになったのです。

ただ、現実のハエが状況に応じてどんどん学習を重ね、動きの精度を向上させたり、予測不可能な動きを取るのに対して、シミュレーションの自動車はかなり間抜けで柔軟性にかけるものだったと言います。

また、ハエは触角の片方を切除するなどした場合、それに対応するように学習を行うのに対して、自動車はセンサーを失うと、同じ場所をぐるぐる延々回るなど、まるで対処できないことが確認されました。

これは単純なナビゲーション動作であっても、昆虫にはより複雑な制御構造があることを示しており、今後の自動運転分野を発展させていくための糧となる情報が含まれていると、研究者のガリオ氏は語っています。

昆虫の単純に見えながら複雑な動作は、最終的に完全自動運転車が危険を巧みに回避する方法のヒントになるのでしょうか?

身近な虫の行動が、未来の高度なシステムを支えることになるとしたら、非常に興味深い話です。

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