インディアン・ジャンピング・アント
インディアン・ジャンピング・アント / Credit: Clint Penick
biology

驚異!女王になるために「脳の25%を潰す」アリ

2021.04.21 Wednesday

昆虫界初となる驚異の能力が発見されました。

インディアン・ジャンピング・アント(Harpegnathos saltatorは、コロニーの女王が死ぬと、働きアリの間で後継争いが勃発し、勝ち残ったメスが新女王となります。

新女王に就任する過程で、メスは卵巣を拡大し、脳を縮小させることが知られていました。

そして今回、アメリカ・ケネソー州立大学の最新研究で、女王の称号を剥奪すると、卵巣と脳が再び元のサイズに戻ることが判明したのです。

この柔軟な可塑性は、昆虫において初となります。

研究は、4月14日付けで『Proceedings of the Royal Society B』に掲載されました。

To become queen, these ants shrink their brains and balloon their ovaries (then, they reverse it) https://www.livescience.com/ants-shrink-then-regrow-brain-for-royalty.html
Reversible plasticity in brain size, behaviour and physiology characterizes caste transitions in a socially flexible ant (Harpegnathos saltator) https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2021.0141

仁義なきバトル!新女王になると寿命が「半年から5年」に

インディアン・ジャンピング・アントは、他種のアリと同じく、厳格なヒエラルキーを持っています。

しかし、大きく違うのは女王が死んだ時のコロニーの対応です。

一般的なコロニーは女王が死んだ後、下位の働きアリたちが次々と死んでいき、さらに、上位の王族たち(メス)が自らのコロニーを一から作るために巣を離れることで自然消滅していきます。

ところが、インディアン・ジャンピング・アントたちは、女王の死をきっかけにして、メスの働きアリの半数以上が参加し、1ヵ月間にわたる後継争いを開始するのです。

死闘の末に勝ち残ったメスは、フェロモン(化学物質)を放出することで、コロニー全体に「我こそが新たな女王なり」という御触れを出します。

(ちなみに、本種の女王は1匹ではなく、100匹のコロニーにつき5〜10匹います)

細長いアゴが特徴的
細長いアゴが特徴的 / Credit: Clint Penick

そして、新女王たちは、遺伝子発現の変化とドーパミンの放出によって、卵巣を拡大し、を縮小させます。

卵巣は元の5倍に膨らみ、脳は25%小さくなります。

さらに、女王の特権として、寿命が6ヶ月から5年にまで伸びるのです。

研究主任のクリント・ペニック氏は「女王は基本的に産卵しかせず、1日に30万個もの卵を産むこともあります。そのため、原則として二度と巣から出ず、日の目を見ることもありません。

また、狩りをしたり、子どもの世話をしたり、巣を守ったりする必要もなくなります。

女王のニーズはすべて満たされているので、働きアリのように複雑なタスクを実行するための認知能力がいらなくなるのです」と説明します。

では、地位の変化とともに身体が変わるのなら、女王でなくなるとどうなるのでしょうか?

次ページ王座を剥奪すると1ヶ月で元どおりに

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